19世紀の西ヨーロッパ。
それは20世紀に向けて、産業革命以後のさまざまな社会構造の変革の過渡期にあった時代。

だからこそ根強く残っていた家内制、或いは工場制手工業(マニュファクチュア)における手作業による生産においてはもちろん、機械工業による生産であっても、この時代のモノにはまだまだ、現代の生産物にはない、どこか人が介在した「匂い」が感じられるものが多いです。

 

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19世紀のフランスで流行したさまざまなモチーフのステム付きのプレスガラス。

このカタチのグラスはまさに当世ならでは、機械生産による細かく繊細なデザインと、機械化過渡期だからこそのガラスの気泡やバリによる無骨さの、双方が同居し見え隠れする、魅力的な器だと思います。

 

19世紀の新技術「プレスガラス」

プレスガラス。
熔融したガラスを、複数の「割型」でプレス (=型押し) して成型されたガラスをこう呼びます。

アメリカで1827年に開発され、フランスでは1830年代にまずはバカラ、サンルイといった、高級なクリスタルガラスの品質と生産性の向上のためにその技術が使用されました。その後、1800年代半ば以降に量産化体制が確立し、一般家庭にも普及をしていくことになります。

手吹きのガラスと比べてもずっと綺麗で整った整形を可能にした、以後発展を遂げていくことになる当世最新の技術ですが、上に紹介した19世紀のそれは、まだまだ整形過程にできた気泡も多く、「割型」の合わせ目にガラスが入り込んでできた筋 (バリ) が目立ったりと、仕上がりがどこかラフな印象。

そこには同時代の手吹きのアンティークガラスともまた違う、機械産業の過渡期ならではの愛嬌が感じられます。

 

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菫を生ける花瓶として

チェコのボヘミアガラスに影響を受け作られるようになった、ごく特徴的なカタチのこのグラス。

19世紀半ばの流行は、時の皇帝ナポレオン3世  (在位: 1852年〜1870年) の妃ウジェニーがきっかけでした。彼女が好んだ花、菫 (スミレ) が当世の流行花となり、その花を生ける小さな花瓶として重宝されたのが、このカタチのグラスだったそうです。

そんな背景もありこのグラスはフランスではヴァス・ヴィオレット (英: ヴァイオレット・ベース) とも呼ばれます。

北フランス、ポルティユー (Portieux) のガラス工場や、クリスタルリー (クリスタルガラスの生産地) であるルクルーゾ (Le Creusot) といった場所を中心に、クリアのシンプルなものから、アンバーやブルー等のカラフルなものまでさまざまなデザインで、このグラスが作られました。

 

産業革命以後の発展の渦中のなかでこそ生まれ、皇后という時の権力者の嗜好があってこそ増えたデザインのバリエーション。

そんなふうな視点で向き合うで、グラスの佇まいもまた違ったものに見えてきますね。

 

現在では多くのコレクターもいるこのカタチのアンティークグラス。

couperinでも繊細さとラフさの同居を1番素直に感じられ、現代の暮らしにも馴染むシンプルなクリアガラスのものを主に仕入れをしています。魅力的なグラスは、実用にはもちろん、インテリアのオブジェにもお勧めです。

オンラインショップでも紹介していますので、よろしければご覧になってみてください。

 

参考: Suzanne Slesin, Daniel Rozensztroch, Stafford Cliff, and Marie-Pierre Morel “le Verre” Paris, 2001

 

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