少々の悪天候に見舞われたり、過密日程でどたばたとしたりもしましたが、
清々しくて気持ちが良い。そんな秋の買い付けとなりました。
皿、グラス、カトラリー、紙モノ。
到着時のパリはあいにくの雨でしたが、出会いに恵まれることができました。
買い付けの主題は2つ。couperin 常設の品の仕入れと、帰国後の表参道での白をテーマにしたイベント「BLANC」に並べる品の仕入れ。
いつだって心惹かれる白色は、自分にとってはもちろん、フランスアンティークの愛好家にとっては定番の品。だからこそ、couperin というお店単位で考えたときには、他のさまざまな要素との足し算、引き算のなかでどんなふうに昇華できるのかが大切。
白は常に全体であり、余白です。
けれど今回の買い付けは、イベント「BLANC」に向けて的が1つ絞られていたこともあり、一方では日々の暮らしの用の品として素直な白の仕入れに勤しみながら、他方では骨董品としての couperin の彩りを探す。
そんなふうに、二項に普段よりすっきりとした目線が持てていた気がします。
軽やかな仕入れ。
思索を深めて、鋭い集中力のなかでこそ見えるものもあれば、開けた目線でこそ見えてくるものもあるのですね。蚤の市やアンティキテで眼に映る品々が普段と少し違って見えることを自覚して、そんなことを考えながらモノ選びをしていました。
買い付け後半は南フランスへ。
仕入れからの梱包、次の街への移動と追われる日々でしたが、最後に訪れた地中海沿岸の地ニースで、少しですがゆったりとした時間を。買い付け中に瞬間瞬間でふわりと浮かび上がってきた小さな想いの種を、自分なりにちゃんと掴み取って根付かせる、そんな作業をこの街で。
海を眺めた瞬間に思い出したのは、ル=クレジオの海を見たことがなかった少年。
具体的な内容は学生のころの記憶でもう薄れてしまっていたけれど、南仏の海辺が舞台だったことと、美しい文体で綴られる少年の純粋無垢な佇まいに心惹かれたことはよく覚えていた。
買い付けの主目的地ではなく、旅の工程を作るなかでの偶然の巡り合わせで訪れた街でしたが、この場所で立ち止まる時間がとれたこと、学生時代の記憶の引き出しが不思議と開いたことは、きっと意味のあることですね。
普段から併設のカフェ filtopierre で食べているニース風サラダ (サラダ・ニソワーズ) の本場の味も。
本場でこそ感じられる魅力を存分に楽しみつつも、フランスという文化が、現代の東京という街で、僕らなりのフィルターを通してこそ輝くこともある。それは couperin も filtopierre も一緒で、そういうことこそ大切していきたいなぁ。
活気あるビストロの陽気なウェイターの笑顔に疲れた身体を癒されながら、そんなことを思い巡らせていました。
実店舗開店後、半年。降りかかる実務作業という洪水に溺れそうになりならがも、なんとか落ち着きを取り戻せてきたタイミングでの最初のフランス買い付け。
モノを選ぶときの素直な姿勢から、あるいはもう少し掘り下げ遡って、couperin を作る根幹にもなっている子供時代のヨーロッパに対する憧れのような気持ちまで。
今回の買い付けは、自分にとっては純粋さを取り戻す旅でもあった気がします。
さてさて。次の買い付けではどんな想いを巡らせることになるのだろう。