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Curiosité / Items

Toile de Beautiran, 1793-1830s

 

18世紀末から19世紀初期、西洋茜による銅板捺染。

時を経て生まれた草木染めの古色の美しさとニュアンス。手にした「モノ」から此処ではないどこかを感じる時間は、何にも代えがたい。ボルドー近郊、ガロンヌ川沿いの小さな街ボーティランで生み出されたフランスのトワル(更紗)、トワル・ド・ボーティランの切片です。

 

 

著名なトワル・ド・ジュイがパリのための更紗なら、ボーティランはボルドー近郊に住むブルジョワのための更紗。当地では、1790年代初頭からの約40年という僅かな期間、J.P.メリエールによる捺染工場を中心に、美しい美術工芸品が作られました。

海運貿易で栄えたボルドー近郊の人々こそが持っていたインド更紗への造詣の深さと都会性。あるいは捺染のための良質な水源までの距離。パリ近郊とはまた異なるフランス南西部の文化圏。フランスの地方性に掘れば掘るほど興味が深まります。

ちなみにジュイを含めたフランスの更紗の隆盛がごく短期間なのは、17世紀半ば以来、更紗の生産やインド綿の輸入が約70年にわたり国内で禁止されており、18世紀半ばにようやく新しい工芸品としての萌芽がありながらも、19世初頭以降は市民革命後の抜本的な文明の変化で、流行遅れの存在となってしまったことが大きかったようです。フランスでは、ほかにナントの更紗も有名ですが、前述の禁止令に起因して職人技術が枯渇してしまい、製作地が局所的となったこともフランスの更紗の希少性や唯一性に繋がっているのかなと思います(ジュイもボーティランも、工場を設立したのはスイス人技術者)。

ボーティランの更紗の詳細ついては、自分自身も今回手にして調べるまで寡聞にして知りませんでした。毎度のこと、希少だから心惹かれるということはないですが、心惹かれたものが希少なことは悩ましい。けれどユニークな存在だからこそ、思い入れもひとしおになります。

モノを通じた過去との対話を。

(ご売約済)

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