アール ド ヴィーヴル (Art de Vivre)。「生き方の技法」「暮らしの芸術」というような意味のフランス語。Art は技法や芸術、deが前置詞で、Vivreが生き方や暮らし。

暮らしかたや生き方を表すライフスタイルに近い意味で使われているという言葉に、英語のアートにあたるアールという言葉を選べるフランス人の言語感覚。couperinで紹介するモノやコトについて考えるときに、その言葉の生まれた背景とあわせて頭の片隅に置いている言葉の1つです。

 

数年前に買った雑紙『考える人』のパリ周辺の特集号を引っ張り出して読んでいたら、フランス文化研究家で30年以上フランスに在住もされている飛幡祐規さんという方が、このアール ド ヴィーヴルとフランス人の関係を捉えて「フランス人は自分には何が必要で、何を優先すれば幸福かをわかっている人たち、人生を深く味わうことに長けている人たち」と話されていました。

5年間フランスに住めば日本語の質問にもフランス語で応えるくらいにはフランス人になれる、なんていう皮肉を聞いたこともありますが、フランスに在住したこともなければ、初級フランス語だって危うい自分には、アール ド ヴィーヴルも旅行や買い付けでの短い滞在、本や映画を通じて感じるしかありません。それでもこの言葉の存在は、フランスの文化に触れているとひしひしと感じることがあります。

 

アール ド ヴィーヴルには「自分にとっての」という枕詞が隠れているのかなと思っています。正しい間違っているというよりは好き嫌い。だからスティル(=英: スタイル)ではなくアール。自分がフランスに惹かれるのは、「好き」という想いを自分なりの信念を通じてアールに昇華して人生を生きている人々が多いからです。

好きだという想いがアールになるくらい信念を持って、それを自分なりの言葉で語っていく。そしてその想いを押し付けることはなく、言葉の往復のなかで、人と共有できる領域を見つけられるようにしていきたい。

フランス人からはかけ離れた、ずいぶんと和を重んじる日本人的な調子のいいアール ド ヴィーヴルですが、couperinで扱うものがそんなふうな紹介ができたら良いなと思っています。