18世紀フランスでフランソワ・クープランがクラヴサン(英:チェンバロ、古い鍵盤楽器)のために書いた小品集を、フランスを代表するピアニスト、アレクサンドル・タローによるモダンピアノで奏でた1枚。
当代フランスのクラヴサン音楽特有の煌びやかさは、モダンピアノを用いることで影を潜め、あるいはショパンやドビュッシーを思い起こさせながらも、その幹は確かに18世紀に在る。クリアで透き通った旋律と音色は瑞々しく、現代の暮らしにも心地よく溶けこみます。それでいて時代を越えるというよりは、バロックから近代へと至るまでのフランス音楽の「繋がり」もまた強く感じます。
バロック時代のフランスの大作曲家。10代でパリのサン・ジェルヴェ教会のオルガニストの地位を、その後、25歳からは、太陽王ルイ14世のもとでヴェルサイユ宮殿の王室礼拝堂オルガニストの地位を務めました。
宮廷での職務や、王族へのクラヴサン教授のかたわら、美しく華やかなギャラント様式の作品を多数作曲。特に4巻のクラヴサン曲集は、当時のクラヴサン奏法の教本、かつレパートリーの一部として、現代のピアニストにとってもごく重要な役割を担っています。「神秘的なバリケード」「目ざまし時計」「ミミ」「 編み物をする女たち」等、作品に翳された、情景が浮かび上がるような詩的な表題も魅力的です。
例えば、個性が強いアイラウイスキーの魅力の本質に、飲み口優しいハイボールで嗜んでいるうちに気づき、やがて取り憑かれていくように。時代固有の技法や形式といった教養を聴き手に迫りがちなクラシック音楽ですが、旋律や和音、あるいは楽器の音色の、無垢で明快な「聴き心地のよさ」こそをまずは愉しみ、そしてそれを繰り返すことで古い歴史・文化が生んだ楽曲の重層的な奥深さが垣間みえてくる、そんなふうな順序だってあって良い。
チェンバロのための18世紀のバロック音楽をギターやピアノで。
ピアノのための20世紀フランス近代音楽をアコーディオンやハープで。
音楽のもつ美質は、楽器や編成が変化することで、本来とはまた違ったかたちで浮かび上がりますね。
聴きやすさを大切に、伝統に即したオーセンティックさを保ちながらも、日常に穏やかな背景音楽として溶け込んでくれる「編曲されたクラシック音楽」を、クープランでセレクトしました。