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上質陶器、イタリアにおける一片のカタチ

 

19世紀中葉、イギリスで生まれた上質陶器クリームウェアの作陶技法は、ファイアンス・フィーヌとして認知度も高いフランスだけでなく、ヨーロッパ大陸を横断し、主権国家が形成せんとしている時代のイタリアにも伝播していました。

規模としては小さいながらもボローニャやサッスオーロといった都市を中心に存在したイタリア半島北部のそれは、定義は多少異なりますが、同国の専門用語で「テライヤ / Terraglia」と呼ばれます。

ウェッジウッドを筆頭としたイギリスへの羨望を出発点に、18世紀末から19世紀初頭にかけて、ヨーロッパ各地で独自発展を遂げた上質陶器の、イタリアにおける一片のカタチ。

今回の紹介は19世紀初期頃の薬草保存器。マヨリカ焼きの発祥地であるイタリア式に習うなら、アルバレロと呼んでも良いと思います。

上品でいて凛とした古格は、国を問わず、同時代の無加飾の上質陶器の多くに通底するものですが、全体のプロポーションやシェイプの描き方、施釉の色、表情といった細部には、イギリス、フランス等のよく知られた上質陶器とは異なる、独特の感性があります。

微細でいて確かな差異を愉しむことは、古物の醍醐味ですね。

抑制されながらも垣間見える、大らかさや甘やかさ。
端正な様式美のアクセントとなっている個性は、とても心地よいです。

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