Item / Silverware

Risler kist Cuillere à Cafe en Argent Massif

 

1840〜70年代頃、純銀カフェスプーンです。

蚤の市で手にした際、ミネルヴァの刻印と先端の尖った伝統的なボウルデザインからフランス製と判断できましたが、全体の造形にパリ近郊のそれとは異なる固有の美意識が感じられ、小さくさりげない実用道具ながら、意匠のディテールが生む不思議な雰囲気にぐっと惹かれました。

のちに刻まれた「Risler kist」の文字から詳細を追い、ジャン・アンリ・リスラーキスト(1808-1883年)なる、アルザス地方ミュールーズで代々オルフェーヴル(銀細工師)を営んでいた職人による造りであることが判りました。綴りから恐らくドイツ系の家系でしょう。洗練を残し湛えながら、可憐というよりはどちらかといえば実直で硬質な佇まいにも成程と納得でした。

ミュールーズの街はジャン・アンリが生まれる10年前からフランスに帰属し、62歳のときには再びドイツ帝国へ併合されています。絶えざる国境紛争に晒された地で生涯を過ごした職人による一品は、フランスというより「アルザス製」と呼ぶのがきっと適切です。

ハンドル背面に純度(0.800)を表すミネルヴァ品位証明と工房印、表面にビゴルヌの偽造防止印が確認できます。

程よい硬度を残しつつ柔らかさを失わないマチエール。指馴染みはやさしく、日常をさり気なくもちょっと特別なものにしてくれる、そんな佳品だと思います。

 

Argent Massif (純銀器)

素地に別の金属を殆ど使うことなく、純度の高く成形された純銀器。輝きや肌触り、食器やグラスに触れたときの響き、繊細な造形。19世紀半ば以降、ヨーロッパの家庭やレストラン、ホテル等さまざまなシーンに所謂シルバープレート(真鍮や洋白等の下地を銀で覆った銀)が普及しましたが、純銀器は変わらず一握りの人々のための高価な品物でした。

 

L’argent massif en France (フランスの純銀器)

クープランで主に紹介をしている19〜20世紀初期頃のフランスの純銀 (=Argent Massif) には2つの種類があります。

純度95%のプルミエ ティトル (1er titre)、純度80%のドゥズィエーム ティトル (2e titre)。ごく柔らかな素材であることから純銀であっても、銅などの別の金属を素材を少量だけ混ぜて成形をされるのが通例で、その純度に応じて呼び方が異なっています。性質上プルミエがより柔らかく、ドゥズィエームはより硬質になり、用途に合わせ使い分けられました

見分け方はフランス国内で統一して使われていた刻印。例えば1838年から1900年代半ばまでの純銀器にはミネルヴァ (ローマ神話の女神) の横顔の刻印が打たれており、その横に一緒に刻まれている数字「1」「2」を見て、純度を判断します。或いは、アクセサリー等の小物類には猪や蟹の刻印が打たれており、こちらは純度80%であることを保証しています。銀が資産の1つとして捉えられていた時代の名残を組んで打たれた保証のための刻印が、作りの詳細を知る手がかりとなります。

 


 

銀器の普段の使い方とお手入れ方法

銀器は使っていると空気に触れて色がくすんでいきます。

・洗ったあとはできるかぎりすぐに拭いてあげてください。
・毎日と言わずとも定期的に使ってあげることが大切です。

黒ずみが気になるときはお鍋に熱いお湯を張り、アルミホイルと重曹を入れ銀器を浸しください。銀が輝きを取り戻します。またこの方法であれば、銀器の量が増えても、手間が増えずにお手入れいただけると思います。それぞれの銀器は重ねずに離していただいたほうが、効果は出やすいです。

※鍋はアルミ以外の素材を使用してください。
※シルバーナイフについてのみ、ハンドルとブレードの接合部がニワカという熱に弱い糊で接着されているため、上記方法には注意が必要です。

説明をすると面倒な素材に聞こえますが、実際は想像よりずっと気軽に使っていただけると思います。ぜひ暮らしのなかで程よく気をかけてあげながら、銀器と付き合ってみてください。

 


 

14.5cm

(ご売約済)

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