Glassware / Item

Verre à Contiture / Gobelet

 

おやっと目を引く珍しいコップ型のガラス器を見つけました。

オランダの蚤の市で、行商に訪れていたベルギー人の老マダムから譲ってもらったものです。

折りたたむよう吹き上げられた口縁。こうした作りは、紙や布をかけて紐で縛りコンフィチュールやジャムを保存することを想定していた場合に取り入れられました。底面の処理を見ても、保存器だった可能性は高そうです。ただ、あまり見たことのない寸法と造形です。わずかにクリスタルガラスの性質を帯びた肌合いが白くやわらかで、揺らぎ、かしぎにもとても雰囲気があります。また比較的厚みがあり、雑器としての堅牢な風通しさが感じられるところも好ましいです。古いガラス器を構成する複数の要素が、(幸運にも)気持ちよく混じり合い均衡を保っているように思います。

容量の注げる佳き寸法は、変わり種のガラスコップとして暮らしに馴染んでくれそうです。

19世紀半ば頃、ベルギー近郊。

 

吹きガラス

19世紀末までフランス各地の村の大・小さまざまな工房で吹きガラスが作られていました。

ガラスの製法には様々ありますが、この時代の民衆の器としての吹きガラスには、もっとも古いガラス製法である宙吹きという手法が主に用いられています。吹き竿の先に溶けたガラスをつけ、息を吹きこみ、空中で風船のようにガラスをふくらませて形作りを行う製法です。

あるいは金型を用いてカタチを整える場合には型吹きという製法が用いられることもあります。この技法は19世紀半ば以降に発展し徐々に機械による型吹きがメインとなっていきますが、古い作りで見られる手作業(マウスブロー)による型吹きガラスには、機械を用いた成型とは異なり気泡や揺らぎといった個体差があります。

仕上がりの雰囲気ははそれぞれですが、職人の気配が感じられる吹きガラスならではの表情はとても魅力的です。20世紀以降、ガラスの製造は「手工業」から「機械工業」へ移行していき、小さなガラス工房はやがて姿を消してしまいました。アンティークの吹きガラスには、今は失われてしまった手工業文化の一端を垣間見ることができます。

 


 

約 口径8.2 / 底部径6 / 丈 9cm

(ご売約済)

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