Item / Pottery

Vieux Paris Tasse et Sous-tasse

 

上品な金彩と彩り豊かな風景描写が混じり合うコケティッシュな魅力に惹かれました。

19世紀、パリ窯のカップ&ソーサーです。

素地となる器胎は、量産で焼かれたパリ窯を象徴する造り。他方で絵付けは、とてもパーソナルで親密な気配を纏っています。19世紀のパリ窯とは、磁器製造の全工程を一手に担う中規模以上の窯から絵付けのみを行った工房までを幅広く指し示す総称ですが、こちらは後者の品でしょう。カップ底面の「X.V」は、上絵付け焼成前にデコレーターが刻んだ自身のサインです。

パリ窯らしからぬ華美に寄らない素朴な筆触に癒されます。かのマリー・アントワネットは敷地の一角に田舎家を建て、側近たちとお百姓さんごっこをしたことが知られていますが、革命後のパリ市民にも残る田舎趣味の一端が垣間見える、長閑で愛らしい風景画は魅力的です。

白磁質はゆららかで憂いがあり、シンプルな造形と手のひらに収まる小さな姿形からは慎ましさも感じられるところです。

こんなカップ&ソーサーがティータイムにさらりと添えられたら、なんとも素敵だと思います。

 

Vieux Paris (ヴュー パリ、パリ窯)

ヴューパリ。フランス革命前の1700年代半ばから、ナポレオン3世時代が終焉する1870年代頃まで、パリ北東に存在した磁器窯の総称で、ポルスレーヌ・ド・パリ = パリの磁器 (Porcelaine de Paris) とも呼ばれます。また日本では意訳をして「パリ窯」の呼称が使われます。

パリ窯には大きく分けて2つの時代区分が存在します。

初期のパリ窯は1770年代、王立磁器窯セーヴルの持っていた特権を王が緩和したことでパリに設立された複数の磁器窯を指します。

ただそれらの窯は王侯貴族が主なパトロンとなっていたことで、革命後に衰退。その後に、一度閉窯した王立セーヴル窯や、初期のパリ窯から独立した職人による、より小規模な磁器窯が群雄割拠することになるのが、1800年代、後期のパリ窯です。

その技法が中央の権力者に守られ、王侯貴族に向けて作陶を行なっていた磁器製造の職人たちが、フランス革命を経て職を失い、その結果として改めて独立窯(或いは絵付け専門工房)がさまざまに立ち上げられることになりました。

※厳密に言えば初期〜後期にかけて地続きだった窯も存在します。

その歴史的な出自から、煌びやかなモデリングや絵付けをされていることが主ですが、クープランでは、パリ窯固有の美質を備えながも現代の暮らしに溶け込む、上品で慎ましやかな佇まいのものを厳選し紹介しています。

 


 

カップ:約 口径6 /奥行き7.5 / 高6.1cm
ソーサー:約 径12.3cm / 2.8cm

(ご売約済)

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