Item / Pottery

Tasse en Faience de l’Auxerrois

 

19世紀、ブルゴーニュ地方オーセロワ焼のタッス(カップ)です。

司教領であった都市オセールを中心とした周辺地域オーセロワ。現在でも著名なワイン産地としてシャブリ&グラン・オーセロワ地区の名が残っていますが、セーヌ川の支流であるヨンヌ川沿いの静かな水源と豊富な木々に恵まれた地域一帯では、18世紀から19世紀へかけて、白錫釉に多色装飾を施した地方色・民衆性の豊かな素朴な陶器が作られ、地元の人々に親しまれました。

※地図(Click!

古いファイアンス製の陶器は地域特定が困難な場合も多いですが、骨董市で譲り受けるときに教えてもらったウブ出された村の情報に加え、手元にあるオーセロワ焼きに関する書籍との照合から、確度高い推論が立てられたことは幸運でした。

複数の文様パーツ(直線、波線、様式化された草木など)を幾何学的に組み合わせつつ、酸化コバルトやマンガン、アンチモンのような伝統的な顔料を用い多彩色で仕上げた作域は、オーセロワ焼の特徴を示しています。手元の書籍でも、同手の掲載はありませんでしたが、同じ文様パーツを用いた作品を複数確認しています。

ガーランドのように輪線状に描かれた牧歌的で楽しげな色絵。どこか垢抜けない大らかな筆致に心和らぎます。洗練されすぎていないほのかに灰みを帯びた白釉やゆるやかな造形に、生活と共に立ち上がった工芸品としての作為のない穏やかさを見ていただけるでしょうか。

地域の農民や職人が水やワインをたっぷり飲んで喉を潤しただろう、そんな量が注げるタッス。ワインや穀物の生産地としてフランスを支えた豊かな農業地域における19世紀の「日常」の欠片です。

暮らしのなかでラフに用いられた古陶器の常として、見つけた時点で大きく瑕疵がありましたが、それでも捨て置けませんでした。口縁の欠けと器胎のヒビを黒漆で継いでいます。水漏れはありません。

 


 

約 口縁径9 / 奥行き12.5 / 高8.5cm

(ご売約済)

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