Item / Pottery

Chevrette en Faience du Sud

 

この類の器としては久しぶりにぐっと惹きつけられました。

ふくよかで有機的な無地白釉の器胎の静かな情緒と、道具然とした把手や片口が誘うかつての日常の印象。18世紀、南フランス。ファイアンス製のシェヴレットです。

こうした注器は、古くは16〜17世紀、イタリアのマヨリカ陶器に始まり、フランスでもヌヴェールやリヨン、モンペリエといった窯々で伝統的に作られ、薬剤師の調合のための容器として重宝されたといいます。修道院との結びつきが強く資本力のあった薬局は、古くから窯々の重要な顧客でした。ヨーロッパ全土では「注ぎ口付きのアルバレロ(薬壺)」として分類される器形ですが、フランスにはシェヴレットという固有の語感文化あるため、ここではそれに倣います。

西欧の伝統を踏まえつつ、南フランスであってこそ美質が詰まっている器だと感じます。

施釉は、後年に地域での作陶がより一般化してからの薄灰の色目ではなく、かなり発色のきれいな白色。造形的な洗練からも判るように、非常に質の高い当時の上手の品です。

鉄分を多く含むことによるともされる仄かな朱色が白釉に混じり合ったよう焼成のニュアンスは、新古問わず南仏のファイアンスではしばしば見られる釉調で、個人的嗜好として皿類については手が伸びないこともあるのですが、この器においては、他の国・地域にはない固有の特質を美しさの顕れとしても捉えられたところで、そういう邂逅は掛け替えがありません。

比較的小さめな設計であることにも、飾るにおいての控えめな好ましさを覚えました。

南フランス製の把手付き注器というと、大衆的な農民のための黄や緑の施釉テラコッタ製が古くから存在し、19〜20世紀には白釉製でも相当数が作られ普及しています。それらはプロヴァンス語由来のガルグレットと呼ばれ日常で親しまれてきましたが、今回紹介のシェヴレットはそれとは分けて捉えるべきものでしょう。

ちなみにシェヴレットは本来は雌の子ヤギを指す言葉で、形状比喩として器にも用いられるようになったという説が有力なようです。眺めているとつんっと細く伸びた耳をつけた子ヤギの顔が浮かび上がってきて、器がなんだか愛らしく見えてくるでしょうか。

時代の息遣いと土地の気候風土から立ち上がる香り。古物としての確かな強度を感じていただける佳品だと思います。

 


 

約 幅21 / 奥行き 23 / 高16cm

(ご売約済)

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