Couperin

南フランスの骨董市で、ドイツ人ディーラーから譲ってもらいました。

英国のスモーカーズチェアを手本に、在地の素材と素朴な作法で仕立てた大陸製の肘掛けチェアです。

全体はパイン、アームのみブナ、トネリコ系の広葉樹。褪せた黒塗装と日常の使用で顔を覗かせた地肌の色目が自然と混じり合い、柔らかな重たさを帯びています。脚はろくろ挽きではなく面取りにより作られ、貫を持たない軽やかな造作で、素材選びと作りの簡素化にも地方性が見てとれます。大陸北部の「彩色木工芸」文化の気配を残しながら、甘さは控えめです。

また塗装のない座面中央部や背棒に残るビス、座面周縁のビス穴は、薄いパッドを鋲留めしていた名残で、それがあってこそ琴線に触れました。「今ここ」を留め、時間の余韻に浸りたいと思わせてくれる、ながく使われてきた暮らしの痕跡を穏やかに宿しています。オールドパイン材の家具に惹かれたのは久しぶりで、見逃せませんでした。

アームは半円に回り込み、肘を預けやすい設計。座面の高さ（42.5cm）も適当で、ダイニングの端での腰掛けや、書斎のサイドチェアとして収まりも良いサイズ感です。

製作地はドイツ、もしくはドイツ近隣の北欧圏ということもあり得そうです。いずれにせよ、英国意匠の影響を受けた大陸の市井の職人による民芸的解釈として見るのが自然だと思います。時期は19世紀末〜20世紀初頭頃。

民具としての健やかな美しさと、椅子としての素直な座り心地を併せ備えた一脚です。

組み直しをおこなっているため、ぐらつきはありません。

年代｜19世紀末〜20世紀初頭頃
生産｜ドイツ（北欧諸国の可能性含む）
寸法｜幅580 奥行き440 高715 (座面高425) mm

配送方法：
アートセッティングデリバリー（旧ヤマト家財宅急便）200サイズ
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