Furniture / Item

Tabouret provençal

 

 

—じゃあ、あなたがた羊飼は魔法を知っているっていうのはほんとう?

—いいえ、ちっとも。だけどここにいると星に近いんで、平地にいる人よりか星の世界の出来事をよく知っているんですよ。

——アルフォンス・ドーデ『風車小屋だより』
(桜田佐訳, 岩波書店, 「星−プロヴァンスのある羊飼いの物語」より)

 


 

1900年代初頭にプロヴァンスの山あいで使われた素朴な民具。

羊飼いや農夫が、日々の作業の合間や暮らしのなかで腰掛けた小椅子です。

個人が生活のために拵えたもの。とはいえ粗く作られているわけではありません。厚みのある座面は腰をあずけやすいよう浅く彫り込まれ、背板の立ち上がりや三本脚の角度、全体の重心にも、身体を想像して削られた痕跡が感じられます。座ってみると、そのことが伝わってきます。

派手さや自己主張とは無縁だっただろう作り手が生む、感覚の精度と誠実さ。素朴な材料と手近な工具から生まれたものとは思えない、端正な気配を備えています。その一方で、有り合わせを使ったような木の肌合いは粗く、割れや節、削り跡から垣間見えるのは、生活の必要と、そこに当たり前に向き合う率直さです。

自然な無骨さが風を通しながら、しなやかさを宿した佇まいをしています。

背面には刻まれた「1900」と「IHS+十字架」の文字。

1900は、製作年、あるいは所有や記念の年でしょう。IHSは、カトリック圏で広く用いられたイエスの聖名のしるしです。守護や、日々の暮らしへの祝福の願い。あるいは山での無事、家畜の安全、収穫、家族、日々の労働への労い。

そこにあるのは、きっと柔和な祈りとしての刻印です。教会のための家具ではなく、生活の道具にそれが見られることは、当時の信仰が特別な場だけでなく、手に触れ、身体を預ける、働く日常のなかにあったことを今に伝えてくれる気がします。

 


 

年代|1900年前後
地域|南フランス
寸法|幅320 奥行460 高850/座面高420〜440mm

 


 

配送|アートセッティングデリバリー(旧ヤマト家財宅急便)200サイズ
送料|見積もり Click!(外部サイトに移動します)

(ご売約済)

Related posts

テキストのコピーはできません。