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Items / Pottery

Faience fine “Ecuelle”

 

磁器質を帯びた象牙色の美しいテールドピップ。
1800年代初期ファイアンスフィーヌ、ごく上質なエキュエールの紹介です。

エキュエール (Écuelle) とは古いフランス語で、18世紀以前より用いられてきた、暖かなスープを注ぐためのハンドルの付いた平たい深鉢のことを指して、こう呼びます。

18世紀末頃のフランスの古いファイアンスリー (ファイアンス陶器窯) のカタログを見ると、同手の器のことが、ほかのクラシックなフォルムのそれに相対するかたちで「ヌーヴェル (=新しい) フォルム」というふうに表現されています。また同時代の別の窯のカタログを見ると「ギリシャ風の耳付きエキュエール」と書かれていることもあります。18世紀末〜19世紀初期、工芸はもちろん、建築から彫刻などさまざまな分野で、古代ギリシャの意匠や形状を規範として興った芸術運動、新古典主義の影響下で生まれたデザインであることが分かります。

初期クレイユのものが著名ですが、刻印がないので、別の窯での作陶品である可能性も含んでいます。

古手のファイアンス・フィーヌこそが纏う美しさと気品。慎ましやかな佇まいに、静かに引き込まれます。細かな欠損もありますが、それすら古陶器固有の美質と個人的には感じます。

実用ももちろんですが、何よりも先ずクラシックな彫刻陶器として。

空間に添えておくだけで絵になる、美しい室内装飾品です。

 

 

※スライドショーにてご確認いただけるハンドル下部や口縁、底面の傷は、丁寧に扱えば拡がっていくものではありません。ご不明点ありましたら別途お気軽に問い合わせください。

 

Faience Fine (ファイアンスフィーヌ)

ファイアンス フィーヌ(仏: Faience Fine)。
それは1800年前後のフランス陶器を語る際には、ごく大切な一語です。

ファイアンスとは淡黄色の土の上に白い錫釉をかけ完成させる焼き物のことです。1700年代のフランスで中上流階級の人々が用いた食器には主として「ファイアンス製陶器」と、限られた貴族のみが所有することができた高級な「磁器」「純銀器」がありました。

そんなフランスに、1700年代半ば、当時ウェッジウッドを筆頭に陶器製造の最先端国だった英国の「クリームウェア製陶器(クイーンズウェア)」が流入し、貴族、そして当時台頭してきていた市民階級(ブルジョワジー)たちの羨望の的となりました。

ですが王室によりその製造技法は特定の窯のみの特権とされ、また国内で採取できる陶土の違いもあり、英国式陶器をフランス各地で作陶することは困難でした。経営者や陶工たちはそうした環境化、1789年以降のフランス革命という激動をも乗り越え、伝統的なファイアンスと英国クリームウェアの狭間での技術開発を続け、人々の心を満たす、フランスならではの美しい陶器を作り出しました。

きめ細やかで品のある陶肌と、指で弾いた時の耳心地良い響き。
白、あるいは象牙色を素地にして、ごく薄い透明釉を施し低温焼成した繊細で軽やかな上質陶器。

それがフランスの「ファイアンスフィーヌ」です。

1700年代半ばに隆盛を極めた、貴族向けの英国式陶器が、今では初期のファイアンスフィーヌと呼ばれます。パリのポントシューやロレーヌ地方のリュヴィル(当時はロレーヌ公国領)といった王侯貴族の保護下で発展した名窯があります。

1800年代前後頃、市民社会到来以後は、王侯貴族の保護下にあった窯は廃れました。入れ違いで独自の進化・発展を遂げたのが、フランス式のファイアンスフィーヌです。ナポレオンの大陸封鎖による英国製陶器の輸入制限という外的な後押しも受け、ブルジョワ的な価格や意匠性での顧客アプローチに成功した、新興の窯々が存在感を示します。クレイユやモントロー、ショワジールロワといったパリ近郊の窯を軸に、フランス各地で、ファイアンスフィーヌが作陶されました。

とは言え時流の変化は世の常。1830年代以降、止まることのない近代化の波のなか、さらなる量産に向いた半陶半磁器(≒テールドフェール)の台頭があり、その作陶は急速に衰退することとなりました。

革命前と後で時代を区切るなら、それぞれが数十年という僅かな期間の作陶でした。

ファイアンスフィーヌ、それは当時のフランス人が苦心の末に生み出した、儚さと当代固有のブルジョワ的穏当な実直さを纏った骨董品です。

 

 


 

< Information>

サイズ: 約W19 × D13.8 × H10.5cm

 

(ご売約済)

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