Column / Item Note

羽をやすめたコロンブ

 

18世紀頃、フランスのカトリック教会より、コロンブの彫像です。

福音書において、鳩の姿をした聖霊が降りてくることは、神の存在とイエスの宣教の始まりを意味します。カトリックの伝統における三位一体ですね。「白い鳩(聖霊)」は、フランス語では一般的なピジョンと区別してコロンブと呼ばれ、純真と平和の象徴ともされ、一層重要な意味合いを歴史的にもってきました。

祈るイエスの前に降りてきたとされるように、羽をひろげている姿であることも多いですが、羽を休めた静的な佇まいをしています。

フランスにおいて、この姿の工芸品として最も著名なのは中世期の聖体容器だと思います。ピクシード(英:ピックス)と呼ばれる塔の造形と対になるようにして、羽を休めたコロンブの聖体容器がしばしば作られました。コロンブ・ユーカリスティック、或いは古代ギリシャに倣いペリステリウムとも呼ばれてきたそうです。パリのクリュニー国立中世美術館にも、かのリモージュ琺瑯製の塔とコロンブの聖体容器がそれぞれ所蔵されています。

今回紹介のコロンブも、そんな存在の余香を漂わせているでしょうか。収めるという用途は伴っていない純粋な彫像で、鉄製の軸が当時のオリジナルとして底面に刺さっていました。聖堂の中心部にある聖櫃に飾られていた可能性も高そうです。

白い鳩の象徴性に根本から違和感を覚える方は日本にも少ないように思います。祈りを伴う異国の宗教遺物ですが、素朴な親しみやすさと手の温もりへの憧憬は自然な心情で、国や時代、表層の文化を越えて、やさしく寄り添ってくれる存在だと感じます。

台座は、本体のニュアンスと色目にも添う良質な神代楢にて仕立てました。

丈 25.5cm(台座含む) / 15.5cm(本体)

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