Furniture Note

East Anglian Chair

 

1800年代前期、英国。イングランド東部、イーストアングリアのホローシートチェア。

小商人、職人といった市井の人々が居間や台所で用いた家族のための家具です。よく知られたつくりではありますが、数あるなかでも、貴族主義への憧憬が控えめなシンプルな意匠に惹かれます。座面を窪めたホローシート。ささやかな溝彫りとテーパードした細作りの脚部は品があります。この地域の椅子では脚部の貫を四角で結んだロの字型もしばしば見られますが、前脚部をやや内側に引き込んだ繋ぎ貫(H型)になっているため、立ち姿はぐっと涼やかで、膝まわりの取り回しも良い設計です。

この時代のイングランド。地域は東部に限らないものの、ジェーン・オースティンの世界が頭をよぎります。真面目な読者とまでは言えないなりに、作家の節度ある筆致と、エリザベス・ベネットやアン・エリオットのような紳士階級の知的で聡明な女性の気配、それに田舎の小世界のなかで描写される自作農の家族や質素な牧師館の景色をなんとなしに思い浮かべながら、個人的な琴線に触れる椅子はこの辺りです。

 


 

年代|1800年頃
生産|イングランド
地域|ウェスト・カントリー(南西部)
寸法|W600 d490 H990mm

画像|1  2  3  4  Click!

テキストのコピーはできません。