Column / Item Note

17世紀、ピューター製ワイドリム皿

 

17世紀末、フランス。シャルダンが生まれる前、ヴェルサイユではルイ14世が絶対王政の栄華を極めている頃。個人的には、映画『めぐり逢う朝』で描かれた(それは想像を多分に含む物語とは解りつつ)サント=コロンブが生きた時代と思い馳せたくなります。

美しく枷せたピューター製ワイドリム皿。

刻印が滲んでいて都市は判別することが困難でしたが、アルファベットの「C」、数字の「1693」を読みとれました。

Cは、フランス語の「Commun」の頭文字で当時の一般的なピューター(錫含有率80〜90%)製品であることを示しています。他に当時、より上等とされた(錫含有率の高い)「Fin」の頭文字Fを標したものに加え、認可外の造りも存在します。

例えば鉛含有率の高い古いオランダのそれが、深々とした暗い色合いと高い密度、やわらかな質・肌により、現代において好事家から珍重されているように、合金ならではとも言える国や地域、時代毎の個性はピューター製品の魅力ですね。

今回紹介の手は硬質と軟質のあわいといった具合で、使い込み刻まれた生活の跡から時代の確かな気配が漂いながら、端正で品の良さを併せ持っているのが魅力と感じています。

因みに年代については、同種の刻印を義務付ける国からの勅令が出された1691年に作ったものを、一部の工房では18世紀を通して使い続けていたことも知られていますし、ピューター製品は刻印記載年が必ずしも製作年を示しているわけではありませんが、こちらの皿については一定の相関関係があると考えています。

数年ぶりに訪れたベルギー、初めての街。趣味の良い骨董商から譲ってもらうことができました。

径22.3cm

Related posts

テキストのコピーはできません。