蚤の市で自分の目の前に現れてくれたこと。どうのこうのもなく、ただその喜びで満たされながら、見つけた瞬間にはほとんど選ぶことを決めていました。
フランス、オーヴェルニュ地方の聖母子像。
キリスト教美術の基本主題でも在る聖母マリアが幼児イエスを抱いた構図は、かつて礼拝堂の壁龕に飾られたものでしょう。材と共に意味性が剥落しつつありながら、それでもなお品格を失わず悠然とこちらを見つめてきます。
自然に身を任せた経年のなかで本来あった意味性が少しづつと剥落しながら、同時に付加されてきた豊かさ。時間は何より尊い。そして変わることのない敬虔な祈りの気配。品格と、不在の存在性。凡ゆるをあるがままに受け入れたうえで、敬意を込めて行われた丁寧で真摯な(ごく最低限の)修復も、西洋においては実は稀有なことです。
仕入れるという行為には見つけるという言葉を基本的には選びますが、それは確かに出会いでした。
16〜17世紀頃フランス、オーヴェルニュ地方
全長約80cm程、重量約7.5kg