ドイツのニュルンベルクより。ピューター製の蓋を伴った、デルフト焼に由来する小型の白釉水差しです。
中世末期以来、職人と工芸の都市として知られ、近世にはイタリアと北方ヨーロッパを結ぶ南北交易の要衝として栄えた古都ニュルンベルク。この都市に開窯したファイアンス工房は、オランダから伝わった錫釉陶器の技術語彙を引き継ぎ、地場の金工芸/ピューター職人の技術と結びついて、地域周辺の都市生活者がもつ磁器的な白への羨望・需要を、18世紀を通してファイアンスの側から支えました。
ドイツ文化圏では蓋付きの大振りな飲器が広く用いられたことは知られており、実際に18〜19世紀に多くの作例が残されています。
近世初期の北西ヨーロッパで一般的だった大振りな飲器が他地域では次第に小型化していくなか、ドイツ語圏ではビール文化が生活に浸透していたことで、前時代の器形が変わらず作られたという仮説は立てられると思います。蓋が付く理由はしばしば衛生や虫除けの観点から説明されます。
デルフト焼からニュルンベルク製ファイアンスへと続く技術語彙の連続はとても自然なものですが、本来の生産地で次第に影を潜めつつあった器形が、ドイツではなお作り続けられていた点は示唆的です。金工芸との結びつきや飲用習慣の違いによって、器形が別の意味を与えられて土地に根付いたローカル解を、そこには見ることができるかもしれません。
都市の生活文化と贈答文化を支えた工芸品、ニュルンベルク製ファイアンスの前者の典型を示すものです。無地白釉の実用品は、儀礼用に好まれただろう絵付けのある器に比べると現存数が少なく、目にする機会も多くはありません。同じニュルンベルクの無地白釉水差しは以前にも一度扱いましたが、初めて手にしたやや小さめの作例です。
かたちの妙とやわらかな白釉の肌合いを素直に楽しむことができ、小ささゆえに密度がありながら、18世紀らしい端正で無理のない佇まいで、室内空間に穏やかに溶け込みます。
年代|18世紀
生産|ドイツ
地域|ニュルンベルク
寸法|高17cm
