Item Note

羊飼いのタブレ、或いは…

 

照りつける陽光の下、木々が光を反射していた。羊飼いはいつものように木陰を探すと、自前の小さな三本脚の腰掛けを据えて身をおろし、布に包んだ昼食をひろげる。固いパンとチーズ、干した果物。腰掛けを支えにして、小刀で力を込めてパンを割り、チーズを削る。刃先は木の座面をかすめ、またひとつ痕が増えた。

ひとしきり胃を満たすと、背を丸めながら手元の紙に刻んだ葉を巻き、火をくゆらせる。乾いた土の香りに混じり合う火打石の焦げた匂いは日常で、気に留めるようなものでもない。疲れが白い煙になって溶けていった。

草を食む放牧の仲間たちの群れを風が渡り、ゆるやかな鈴音が静かな昼さがりに響いた。男は物思いに耽りながら、傍らの老犬に目配せをする。陽はまだたかく、しばらく暑さも続きそうな気配だ。

 


 

時代|19世紀頃
生産|南フランス
地域|ラングドック地方
寸法|W400 D290 H260mm

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