Diary

ヨーロッパ旅日記 2024.11.12

 

人の身体や洗剤や香水がラタトゥイユみたいにして混じり合った匂いにつんと鼻腔を刺激され、またヨーロッパへ戻ってきたことを実感します。

身体に堪えるひんやりとした空気は、けれどまだ完全に張りつめてはいません。乾いていてもしとやかな秋の名残りを感じながら、いつもと同じでいつだって新しい古物を探す旅が始まりました。

初日は始発のTGVにゆられて、パリから地方遠征です。朝のエスプレッソを飲みながら食堂車で呆けていたら、不意にムシューから声をかけれました。目的駅に到着後、蚤の市が開催される場所までのタクシーを相乗りしたいそう。

どうやら自分はフランスでは声をかけやすい対象のようで、こういうことは初めてではなくて、むしろ頻繁に起こります。仕入れの只中を除けば、気が抜けてますしね。

「業者だろ?君をヴァンブの蚤の市で見かけるよ」

パリ近郊に住むディーラーから言われるのはお決まりの台詞。いつだって古い物ばかりに気を取られていて、失礼にもこちらが相手のことを認知できていることは殆どありません。今回もまた、「本当に?」と気の利かない平凡な返事を返してしまいましたが、たまに訪れるエトランジェに過ぎず、エトランジェだからこそ目立って見えるのだろうことも自覚はしつつ、互いに顔見知りであることとはまた異なる、ほんの少し街に溶け込めた感覚は、嬉しくもあります。

肩慣らしにしては大きな規模の蚤の市で、18〜19世紀の民芸・工芸品や、パリからの距離の近さを感じる瀟洒で気取ったアール・デコ様式の銀器、ヴィンテージのクリスタルガラスを揃えました。自然と土地との呼吸を合わせることができて、そううまくいかないこともあるなかで、幸先は悪くありません。

7日間で7か所。旅の前半は国や地域を跨いでひたすら移動と仕入れです。何が見つかるかしら。いえ、見つからなくても風景は心に残ります。そうそう、睡眠時間だけはたいせつにね。

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