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17世紀フランス、ヴェール・ド・フジェール

 

儚さと隣り合わせの危うい美しさには、ワインを愉しむというかつての朗らかな日常が内包されている。このグラスにワインが注がれていたこと。想像するだけで心踊ります。

17世紀フランス、当時の気配をそのままのかたちで残した、素晴らしい状態のヴェール・ド・フジェール(羊歯ガラス)です。

15世紀から、ガラス工業の近代化が進むことになる18世紀末ごろまでのヨーロッパにおけるガラス工房は、その多くが、資源の豊富さを背景として森林地帯に建てられました。フジェールの呼称は、ガラスの原材料である木灰の主成分に由来しています。

ヴェネツィアンガラスが衰退していくことと入れ替わるかたちで、18世紀を通じて、ヨーロッパの民衆的なガラス器製造は各地で飛躍的な発展を遂げることになります。

地域性とバリエーションの豊富さから、18世紀ガラス器は西洋アンティークの1つのジャンルを形成していますが、今回の紹介は、その前史を伝える一品です。

同時代のガラスとしては、ライン川流域のヴァルト(森林)ガラスやボヘミアンガラスがよく知られていますが、比して、フランスのヴェール・ド・フジェールは、生産量が少なく、実物を殆ど見かけることはありません。まして17世紀の個体。クープランとして真っ当な仕入れとなると、次の機会は想像もつきません。

鈍く混濁した、ガラスとしての純度の低さは、当時の生産環境故ですが、そここそに古手ガラス器の美質があります。

400年という時間を経てなお、ガラス器がガラス器で在ろうと凝固し佇む姿を眺め、素直に自然に、古物が誘う高揚感に身を任せていたいと感じます。

 

※写真の品は完売しました。

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