Old European Cutlery

16-17th Century Pewter Spoon

 

年代|16世紀半ば〜17世紀頃(推定)
生産|ヨーロッパ大陸西部
素材|ピューター
寸法|19.3cm

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近世の訪れを感じていただけるでしょうか。

ヨーロッパにおいて、古くから最も身近な食卓道具であったスプーン。市場や宴、季節労働や巡礼など外で食べる機会も多かった当時、人びとが鞘や袋に収めた自分のスプーンを携えることも一般的だったことは知られています。

重たく粘り気のつよい、非常に鉛分の高いピューターに、ゴシックの気配を感じる尖塔風の段付きノブを備えた作。例えば木製のそれと比べれば、やや上等だったとされつつも、比較的製作は容易で、当時は鋳物職人に限らず、旅回りの鋳掛け屋や錠前商のような金物師が鋳造することも少なくなかったそうです。今回見つけた一本は、同時代の他の洗練されたスプーンと比べると、ぐっと粗野で素朴な気配を纏っています。地方都市の職人や商人が、ちょっといい日用品として注文したのかもしれません。

出土例が散発的なようで資料は乏しいですが、低錫合金であることからも、大陸側の市井の生活圏で作られ、用いられたとみるのが自然だと思います。16世紀半ば〜17世紀頃、ネーデルラントかドイツ辺りの作りと見ています。

主食の粥に自前のスプーンを添えて、ニシンの塩漬けは手で嗜み、傍らのホップビールで喉を潤す。そんな生活風景を想像します。

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