年代|15〜16世紀
生産|ドイツ/低地諸国の可能性含む
素材|青銅
寸法|11cm
1500年頃、北西ヨーロッパの青銅製スプーンです。
全長約11cmの小さな作りは薬匙か、あるいは子供用/給仕用の小匙だったのかもしれません。携行できる日常の食卓道具として、数百年前に誰かの暮らしに溶け込んでいたのでしょう。
手元の資料と照らし合わせると、制作地はドイツ語圏の可能性が高く、低地諸国(現在のオランダやベルギー)も視野に入りそうです。いずれにせよ、ブルゴーニュ公国の余韻を受け継ぎながらハプスブルクの時代へと再編が行われていた、当時の北海世界の交易圏で共有された造形語彙のなかに位置づけられる一品です。
この頃のヨーロッパでは、都市生活が拡大し、物も人もそれまで以上に行き交うようになってきていました。形が広域で揃っていく流れと地域ごとの小さな揺れを、比較し眺められることは、中近世スプーンという分野の一つの魅力だと思います。
最初の一本が知的好奇心をくすぐりって、かつてのヨーロッパ世界への扉となり、複数本揃い纏まりとして可視化されることで、一本だけを眺めていたときには見えなかったものが立ち上がり、景色の解像度はあがっていきます。いかにも好事家的ですが、そうした感覚は蒐集の醍醐味です。
銀器の流行をふまえた、低地諸国〜北ドイツ圏では典型的なイチジク型のボウル。素材は、この地域ではラテン(真鍮系の黄銅)やピューターの作例が多く見られますが、青銅製である点がやや珍しいです。そのことは、より南方、例えば青銅器が比較的よく用いられたイタリア文化圏の存在も、視野の先に呼び込んでくれそうです。
