menu

Column / Item Column

初期フランケンタールより

 

1755年頃、ドイツ、フランケンタール磁器窯で作られた古手硬質磁器の水差し。

品よく控えめな藍の小枝は、シャンティー柄とも俗称される、18世紀フランスで好んで取り入れた植物模様です。

フランスの気配を纏うドイツ磁器ということになりますが、それは窯が当初、フランス、ストラスブールに設立されたことに起因します。1755年のことです。ですが同年中に、フランス国王ルイ16世は王立窯セーヴル以外の国内における磁器生産の禁止を通達。窯はドイツ、マンハイム郊外のフランケンタールにすぐさま移設されました。その後は、かの選帝侯カール・テオドールの保護下で、マイセン磁器の技術・労働力も借りながら、作陶を続けましたが、ナポレオン戦争の動乱のさなか、1799年に閉窯し、その歴史に幕を下ろしました。僅か44年という短い期間でした。

地図(Click!

作陶から経営に到るまで万事に影響していた独仏の複雑な国境線争い。

古物は文脈を持ち、歴史を纏っているということを染み染みと感じます。

初期フランケンタールの特質でもあると聞く、とろりとした柔らかな釉薬はまるで陶器のようでありながらも、全体の印象は確かに磁器のそれ。緻密で滑らかな筆致。上品な薄描きの藍絵には、東洋磁器からの影響も垣間見えます。

無駄のないプロポーション。佇まいにも惚れ惚れします。

デコレーター、モデラーの確かな美意識が宿った素晴らしい一品でした。

Related posts

テキストのコピーはできません。