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演奏: ドミトリー・バディアロフ (ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ) 録音: ベルギー、バス・ボドゥー聖母被昇天教会
バッハの、クラシック音楽の入門曲としてはもちろん、暮らしの背景音楽としても、説明やカテゴリー分けが不要なくらいに世界中の人々から愛されてきた『無伴奏チェロ組曲』。
作曲家自身どのような楽器を想定して作曲したかがはっきりとしていない謎めいた楽曲でもあるこの組曲を、当時の文化背景の研究を重ねた音楽研究家で楽器製作家でもあるバロック・ヴァイオリン奏者、ドミトリー・バディアロフによる「肩からかけるチェロ」の名で知られる古楽器ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラを用いた演奏で。
17世紀に想いを馳せならが奏でられる、生き生きとして伸びやかで、それでいてどこか哀愁も感じられる調べ。
作曲家や時代背景についての日本語解説付きです。
ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ
ヴィオロンチェロは、「チェロ」のイタリア語によるフルネーム。 ダ・スパッラはイタリア語で「肩の」の意味。
ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラとは、通常のチェロのように縦に構えるのではなく、エレキギターのように紐をめぐらせて “肩にかけ、ヴァイオリンのように横に構えて弾くチェロ” のことを指します。
参考: カナの婚礼 1562-63 パオロ・カリアーリ (ヴェロネーゼ) ルーヴル美術館
古い絵画資料には上記のようにチェロを横に構えている例が多く見られます。
17世紀、バッハが『無伴奏チェロ組曲』を作曲した当時、チェロという楽器はサイズが一定ではなく、調弦や用途も時によってさまざまでした。楽器の構え方についても同様です。そしてバッハ自身がこの曲を、どのような種類のチェロを想定して作曲したか、ということは明確にはなっていません。
あるいは当時の文化背景を鑑みれば、そうしたことは気に留めていなかったとも考えられています。
例えば第6組曲に関して通常のチェロで弾くことが非常に困難ため、別の古楽器のために書かれたのでは、という説は以前より唱えられてはきたのですが、そのなかでも近年では左手がヴァイオリンと同じような指使いで弾けるヴィオロンチェロ・ダ・スパッラの存在が、研究の成果の1つとして注目が集められてきています。
世界中の多くの識者が楽曲研究を尽くしてきて、それでもバッハがどういった心境で、どのようが楽器を想定して作曲をしたかについての結論は、最後は想像に任せるしかありません。
ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラという選択肢はどうなのだろう。ぜひ17世紀当時の「もしかしたら」の情景に想い馳せながら、その美しい音楽に耳を傾けてみてください。
参考: Dmitry Badiarov, 白沢達夫 訳 “Cello Suites” Ramée, 2009
ドミトリー・バディアロフ (Dmitry Badiarov)
ロシア生まれのバロック・ヴァイオリン奏者、弦楽器製作家。
90年代半ばより、ラ・プティット・バンドやリチェルカール・コンソートの常駐メンバーとして携わる等、さまざまな古楽アンサンブルで参加。ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラの復元政策を成功させたの2004年以降は、この楽器のソリストとしても活躍しています。
彼の活動は演奏家としての顔と楽器製作家としての顔が表裏一体になっており、現在までに60以上の復元古楽器を製作。それらは世界的にも著名な演奏家により愛奏されています。2010年以降はオランダのデン・ハーグを拠点に、音楽史研究を踏まえた復元古楽器製作を続け、多くの古楽器奏者たちの愛顧を受けています。
ヨハン・セバスチャン・バッハ (1685 – 1750)
無伴奏チェロ組曲第1番ト長調 BWV1007 01 前奏曲
02 アルマンド 03 クーラント 04 サラバンド
05 メヌエット I/II 06 ジーグ
無伴奏チェロ組曲第2番ニ短調 BWV1008 07 前奏曲 08 アルマンド 09 クーラント 10 サラバンド 11 メヌエット I/II
12 ジーグ
無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調 BWV1009 13 前奏曲 14 アルマンド
15 クーラント 16 サラバンド 17 ブーレ I/II
18 ジーグ
無伴奏チェロ組曲第4番変ホ長調 BWV1010 19 前奏曲 20 アルマンド 21 クーラント 22 サラバンド
23 ブーレ I/II 24 ジーグ
無伴奏チェロ組曲第5番ハ短調 BWV1011 25 前奏曲 26 アルマンド 27 クーラント 28 サラバンド 29 ガヴォット I/II 30 ジーグ
無伴奏チェロ組曲第6番ニ長調 BWV1012 31 前奏曲
32 アルマンド 33 クーラント 34 サラバンド 35 ガヴォット I/II
36 ジーグ
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