ご縁があって頂いた招待券を片手に訪れた
東京、六本木の国立新美術館で行われている「ルーヴル美術館展 日常を描く―風俗画にみる」。

17世紀前半のフランスの画家リュバン・ボージャン。

彼の描いた数少ない静物画『チェス盤のある静物』が
日々考えている「暮らし」の本質を、優しく解きほぐしてくれました。

 

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人の持つ五感。鏡が「視覚」、楽器と楽譜が「聴覚」、トランプ、巾着、チェス盤が「触覚」、パンとワインが「味覚」、カーネーションが「嗅覚」を表している。というのは美術評論家の受け入りですが、小さなキャンバスに描かれたモチーフの明快さと、その向こう側に潜む寓意。

もちろん作品自体は暮らしに留まらない、宗教や人生を捉えて描かれているのですが、それが「暮らし」に通じる風俗的な静物を通して描かれているからこそ、暮らすことと生きることの関係を、作品を通してとても心地よく、けれど身体のずっと深いところで感じることができました。

パリのルーブルでは気付けなかった。

その時、その瞬間のだからこそ心に響く作品に出会うということは絵画に限らずありますが、過去に見落としていた魅力に気付ける瞬間は幸せです。仕事柄、静物画や室内画に心惹かれますね。

 

国立新美術館で開催される特別展の魅力の1つは、展示室毎に変化する柔らかでほんのりマットな風合いの背景。モダンな装いの空間では、どの作品も表情がパリにいるときとは違っている。

16〜19世紀という過去の時代への敬意をもつことを大切にしながらも、過去をそのまま切り取ることなく作品を魅せてくれています。

今の時代の日本人の感性に寄り添ったその演出は、アンティークを古いものとしてでも、新しいものとしてでもなく、その心地よい中間地点で紹介できればと考えている自分にとって、とても刺激的な体験。

そして本当の求心力をもった絵画は、作品と目があった瞬間に静寂が訪れるのですね。あまりにも有名な美術館の、日曜日の昼下がりの展示。懸念していた展示室の喧騒は、心に響く作品と向き合うと全く気にならなくなり、心ゆくまで彼らと一対一で対話することができました。

やっぱりルーヴルって偉大です。