特徴的な設計は、現地の好事家には「12本の横木椅子」を意味するトルヴスローストールの名で親しまれているそうです。スウェーデンのフォークロアチェア。
この類の椅子は、主にはスウェーデン北東部(バルト海沿い)、ヴェステルボッテンやヴェステルノールランドといった地方で18〜19世紀に盛んに作られ、地域の家庭や公共の場で愛用されてきたそうです。
西欧家具の歴史を俯瞰したうえで捉えれば、貴族のバロック様式家具への情景から派生するようにして生まれた椅子であることが推察できますが、堅牢な構造と実用性を優位にしつつ、日常生活のなかで市井の人々により様式が簡素化され、地域ならではの木材や気質と結びつきながら固有の文化になってきたことこそを、むしろしみじみと感じます。
今回手にしたものは推定18世紀末〜19世紀前期頃の作りだと思います。
この時代のスウェーデンの地方工芸品には、都市部の富裕層の流行でもあったグスタヴィアン様式を意識した黄色や白、淡いパステルカラー、或いはより前時代からの上流階級の象徴でもあるレンガ造りの模倣から始まったとも言われる赤褐色に塗装されたものも多いです。今回仕入れたものは、より渋みのある色目で、経年した針葉樹の木肌に溶けこんで醸成された深みとまろやかさに惹かれました。都会的な洗練も仄かに残しながら、佇まいは朴訥としてラスティックです。古い時代に張り替えられた座面からも見てとれる長く大事に使われ続けてきた痕跡も、その魅力を一層引きあげてもいます。
日本の気候風土との親和性も感じられるでしょうか。
