Item Note

ルーアン焼の日常食器

 

18世紀後期頃のルーアン焼。

フランスで最も長いファイアンス製陶史をもつルーアン焼は、貴族向けの装飾的な高級陶器がより知られていますが、こちらはいわゆる「日常食器(Production Courante)」の製造ラインに属した作。市井の人々にとってのささやかな贅沢が感じていただけるような色絵陶器です。

ルーアン焼を象徴する意匠で、後年、同地方の民窯が手がけたキュノワール陶器にも受け継がれているため、似た柄をご覧になったことがある方もいらっしゃるかと思います。その本歌です。

焼成や造形の質は、同時代のフランス諸窯と比べてもひときわ水準が高く、絵付けも決して単純化されたものではありません。図案としての定型のなかで、モチーフの取り合わせや色遣いは、細やかな変化に富んでいます。シノワズリの様式美を昇華させた、近代フランス的感性の一端を垣間見ていただけるでしょうか。

素朴さに惹かれるのは、現代の生活実感に添う自然なものですが、緻密で絢爛な貴族趣味を得意としていた窯が、同一線上で庶民のために作った「素朴に見える」器。二面性が生んだ固有の趣が確かに感じられます。

ちなみに簡素な筒形に留まらない、わずかなニュアンスを含んだ器形も魅力のひとつですが、これには理由があります。この器は元来、飲用のカップではなく、蓋付きの調味料保存器(サービスウェア)として作られたものです。テーブルウェアとは異なる用途を想定した造形意識が、実際のカタチに顕れています。

カップとして見立てたときの気の利いた佇まいには惹かれます。出逢い難い、素敵な佳品でした。

 


 

年代|18世紀後期頃
生産|フランス
地域|ノルマンディー地方/ルーアン
寸法|口径7.1 幅10 高5.9cm

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