クープランという店舗名にはいくつかの想いが込められているのですが、その1つにラヴェルの代表曲「クープランの墓 (クープランを偲んで)」があります。この楽曲のもつアンティークへの敬意とモダンな気配が同居した、20世紀初期の新古典主義的な性質は、お店の在り方を考える1つのヒントになっています。
ラヴェルに限らず、聴き手がより増えていって欲しいと常々願っているフランス語圏の近代音楽。理性的で狂名洒脱。他にはない魅力がありながら、馴染みがない場合には、その特性こそが聴き進めていくときの1つの障壁になるとも感じています。
ラヴェルの音楽の美質である、精緻な楽曲構造や鮮やかな色彩感覚を内包しながらも、ギターソロならではの軽やかで穏やかな聴き心地は、現代の暮らしにも静かに自然に溶け込みます。
例えば、個性が強いアイラウイスキーの魅力の本質に、飲み口優しいハイボールで嗜んでいるうちに気づき、やがて取り憑かれていくように。時代固有の技法や形式といった教養を聴き手に迫りがちなクラシック音楽ですが、旋律や和音、あるいは楽器の音色の、無垢で明快な「聴き心地のよさ」こそをまずは愉しみ、そしてそれを繰り返すことで古い歴史・文化が生んだ楽曲の重層的な奥深さが垣間みえてくる、そんなふうな順序だってあって良い。
チェンバロのための18世紀のバロック音楽をギターやピアノで。
ピアノのための20世紀フランス近代音楽をアコーディオンやハープで。
音楽のもつ美質は、楽器や編成が変化することで、本来とはまた違ったかたちで浮かび上がりますね。
聴きやすさを大切に、伝統に即したオーセンティックさを保ちながらも、日常に穏やかな背景音楽として溶け込んでくれる「編曲されたクラシック音楽」を、クープランでセレクトしました。