18世紀、フランス中〜北部のファイアンス焼。
香水瓶、薬種瓶、あるいは蒸留酒瓶だった可能性も考えられますが、用途が即座に定まらないくらいには、ヨーロッパではつくりそのものが珍しい器です。丸胴では得られない、リズムと視覚効果を狙ったかのような面取りの造形は、東インド会社を通じてもたらされた中国磁器を見本に、オランダで翻案・作陶が為されてヨーロッパに定着しました。とはいえ当時オランダにおいてすら稀であった器種が、フランスの諸窯にも伝わっていたことは興味深いです。
型・意匠の参照元を感じる、流行を追ったともいえる設計的な造形。対して絵付けはのびのびとしていて、フランスの民窯らしい筆運びがよく現れています。緻密さのなかに残る素朴さ、あるいは柔らかな地方的拙さ。作為と無作為のバランスが、センスへと結びついていると感じます。
ひとつの器が内包している時間と地域性、そして人間らしさ。造形と絵付けの美意識が一つに揃うことの多い、より近代的なデルフト焼と比べれば、上がりは不均衡ともとれますが、不均衡のなかの均衡に心地よさを覚えることがあるのは工芸品の尊さです。
古渡の阿蘭陀とは異なる、フランスで二百年以上の時を刻んできた実体と、かつての文化背景。日本に渡ってきたことで、「舶(渡)来品の徳利」として、文脈や制度に括られてしまいかねない器でもありますが、眺めるほどに、作られた土地の手触りと時間の層、そして固有の美質が確かに立ち上がってきます。単純化に抗う豊かさこそを、ゆっくり愉しんでいただきたいとも思います。
年代|18世紀後期頃
生産|フランス中〜北部
寸法|径9.5 高17cm
