どこかペシミスティックにも思える横顔に惹かれました。
1600年前後頃、オランダ西部、北ホラント産のスリップウェア陶片。
この類の装飾陶器は、アムステルダムから約30km北西に位置する都市アルクマールに在った複数の工房で、数十年間程の期間のみ作り継がれたとされています(窯業自体は百年以上継続)。
器胎全面に敷き詰めるように劇画的でユーモラスに描かれた細やかな絵図は、この地域のスリップウェアの特色です。赤土に泥漿状の化粧土という古典的な技法にのる、吹きつけたような酸化銅由来の緑の色目も、魅力ある土地の方言と感じます。
ネーデルランド絵画の起源である中世装飾写本(ミニアチュール)を思い起こさせるような気配。当時の絵画にも存在が確認できないような、市井の人々のために用いられただろうヨーロッパの地方部の生活道具が、こんなふうに緻密、かつ色鮮やかで華やかだったことは興味深く、まだ見えていない当時の生活実態があるのだろうと想像をさせてくれます。
ちなみにこの陶片は、火覆いと呼ばれる民具の側面部です。住人は寝る前や外出前に、暖炉の熾火を寄せて上から「鐘形の覆い」をかぶせ、火の粉が飛んで火事になるのを防ぎました。
年代|1580-1620年頃
生産|ネーデルラント
地域|北ホラント/アルクマール
寸法|幅16cm
