Early Music / Item / Music
<Information>
演奏: アンサンブル・ペルラーロ – ロレンツァ・ドナディーニ (歌・総指揮) – ジョヴァンニ・カンタリーニ、アニエシカ・ブジィンスカ=ベネット (歌) – エリザベス・ラムジー (弓奏ヴィエル)、マルク・レヴォン (ピック式リュート、弓奏ヴィエル)
古き時代の弦楽ヴィエルやリュートの素朴な伴奏と、清らかで済んだ歌声。
中世のおもかげを残しながら、少しづつ「近世」の息吹が芽生え始めた時代。 とは言え印刷術もなければ鉄砲もない、新大陸への大航海など、いまだ夢のまた夢。
そんな14世紀-15世紀初頭頃のイタリア北部で、貴族たちのために書かれた芳醇な音楽。
幻想的な響きに最初は身構えてしまうかもしれませんが、全編通して穏やかな聴き触りで不快さはありません。聴き手をここではないどこかへといざなってくれる心地よくも不思議な浮遊感。遠い昔の異国の地で生まれた音楽こそが持つ音の渦に、身を任せてみてはいかがでしょうか。
14世紀、ヨーロッパの困難とイタリア芸術
14世紀のイタリア音楽は「トレチェント(=イタリア語で300年代の意)」という総称で呼ばれます。当時のヨーロッパ音楽の最先端、フランスで確立した「アルス・ノヴァ」と呼ばれる高度な理論に影響を受けて作曲されるようになった、多声の世俗曲です。
フランスの複雑な作曲技法に対して、イタリアらしい旋律の美しさが特徴的。人の感情の多寡を素直に表現したその音楽からは、現代へと通ずるイタリアという国の気質の萌芽を感じられます。
14世紀は、疫病ペストの大流行や教会大分裂、英仏百年戦争等、あらゆる観点からヨーロッパ全土がとてつもない困難に満ちた世紀として知られています。
ですがそうした困難のなかイタリアでは、ほかの国に先駆けて人文主義が興り、美術作品、文学の傑作が数々生み出されました。豊かであるとともに独創的でもあって、その時代を行きたエリートたちの知の地平を反映している。彼らは、外ではたいへんな災いが起きていたにもかかわらず、哲学、言語、芸術の仕事に生涯を捧げ、のちに「人文主義」と呼ばれることになる新しい世界観の基礎を築きました。
その至芸の広がりを、確かな見識のもとで蘇らせた、鮮やかな演奏でお楽しみください。
一部参照: Nicoletta Gossen, 原口昇平 訳 “Sotto l’Imperio del Possente Prince” Pan Classics, 2010
演奏家や音楽学者が古文書を読み解いてこそ今という時代に生きる私たちは、歴史的音楽に触れることができる。音の奥にある事実のありがたさを写本という存在をを眺めることで、いつも再確認させられます。
アルバムに収録された曲が納められたいくつかの写本のうちの1冊、作曲者不詳・ロッシ写本より
アンサンブル・ペルラーロ (Ensemble Perlaro)
イタリア出身の古楽声楽家・音楽学者ロレンツァ・ドナディーニを中心に、ヨーロッパ随一の古楽教育機関バーゼル・スコラ・カントルムに集う音楽家たちが集まり、5年間に及ぶ共同活動の末に2004年に結成された、14世紀イタリア音楽を演奏活動の軸に置く中世音楽集団。ヨーロッパ各地の音楽祭を中心に活動。
ペルラーロとは、中世後期のヴェローナを納めていたスカリジェリ家を讃える歌にたびたび出てくる、王の川のほとりに伸び果実をつけるという架空の楡の木に由来しているそうです。
01. 喜べフィレンツェよ / マドリガーレ 02. きらめく星よ / バッラータ 03. おお美しき薔薇、天使の真珠 / バッラータ 04. おおやさしいエノキよ / バッラータ
05. おお、世界は何も見えておらず、へつらいに満ちている / バッラータ 06. 愛らしい天使の瞳が / バッラータ 07. 愛の神が、この心優しい娘と私を取り違えて / バッラータ
08. しとやかな乙女よ / バッラータ
09. おお美しい薔薇よ / バッラータ 10. 帝国はいよいよ星々のなかに座し / マドリガーレ 11. 力あふれる君主の御世にて / マドリガーレ
12. 愛の神が私を歌わせる / バッラータ 13. 傷つきやすい少女の年ごろに / バッラータ 14. あなたの穏やかな瞳の光が / マドリガーレ
15. 緋色に輝く光の筋が/あなたがたは正義を愛したまえ / モテトゥス 16. なんと心は痛む、叶わないなら / バッラータ 17. ご婦人よ、私がこころを / バッラータ 18. フランスの貴族に / モテトゥス 19. 天からもたらされたあらゆる苦難を越えて – パドヴァの偉大な子が / モテトゥス
このアルバムに登場する写本、作曲家
作者不詳・ロッシ写本 作者不詳・ボローニャQ15写本 作者不詳・レイナ写本 パオロ・ダ・フィレンツェ (1355頃 – 1436) ジョヴァンニ・ダ・フィレンツェ (生歿年不詳・14世紀) ヤコポ・ダ・ボローニャ (生歿年不詳・14世紀) フランチェスコ・ランディーニ (1325 – 1397) アンドレア・ダ・フィレンツェ (生歿年不詳・14世紀) ベルトラム・フェラギュ (1385頃 – 1450) ヨハンネス・チコーニア (1370頃 – 1412) バルトリーノ・ダ・パドヴァ (生歿年不詳・14世紀末 – 15世紀初頭) ブレッシャの司祭メルキオール (生歿年不詳・15世紀初頭)
Bach "Cello Suites BWV1007-10…
古楽器ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラによるバッハの無伴奏
Chopin "Ballades & Nocturnes"
19世紀パリ、プレイエル社の古いピアノでショパンを
Messe de Notre Dame
14世紀、中世フランスの美しい歌声
Polonica
16世紀ポーランド文化、素朴なリュートの響き
J.S.Bach "Goldberg Variations"
バッハの深淵、音運びのことば、チェンバロの語り
L'Argument de Beauté
女声による清らかな初期ルネサンス、教会音楽の響き
Flour de Beaulté
中世キプロスのフランス音楽
L'heritage de Petrus Alamire
15-16世紀ネーデルラントに響いたミサ曲を様々に