日本におけるバッハ演奏の第一人者、バッハ・コレギウム・ジャパンの鈴木雅明さんがいつかのインタビューで語られていた一節が、国、年齢、性別問わず普遍的な聴き手を獲得しているバッハという作曲家の美質を何より端的に評しているなと、とても印象に残っています。
前述した作曲家の美質を雑味なく自然に (=違和を覚えず) 聴き感じ入ることを考えるなら、最適な選択の1つではないでしょうか。バッハがお好きな方にはもちろんですが、バッハ (あるいはクラシック音楽全般) を普段はあまり聴かない方にこそ手に取っていただきたいアルバムです。
演奏者である女性ギタリスト、ラファエラ・スミッツは8弦ギターの名手としても高く評価されています。彼女は約30年間かけて、東西ヨーロッパ、南北アメリカ、そして日本の伝統楽器などを元に8弦ギター奏法の独自のスタイルを確立してきました。研ぎ澄まされた感覚、技巧に裏付けされた音楽性は聴く者を終始魅了します。
例えば、個性が強いアイラウイスキーの魅力の本質に、飲み口優しいハイボールで嗜んでいるうちに気づき、やがて取り憑かれていくように。時代固有の技法や形式といった教養を聴き手に迫りがちなクラシック音楽ですが、旋律や和音、あるいは楽器の音色の、無垢で明快な「聴き心地のよさ」こそをまずは愉しみ、そしてそれを繰り返すことで古い歴史・文化が生んだ楽曲の重層的な奥深さが垣間みえてくる、そんなふうな順序だってあって良い。
チェンバロのための18世紀のバロック音楽をギターやピアノで。
ピアノのための20世紀フランス近代音楽をアコーディオンやハープで。
音楽のもつ美質は、楽器や編成が変化することで、本来とはまた違ったかたちで浮かび上がりますね。
聴きやすさを大切に、伝統に即したオーセンティックさを保ちながらも、日常に穏やかな背景音楽として溶け込んでくれる「編曲されたクラシック音楽」を、クープランでセレクトしました。