南仏プロヴァンス、リュベロン地方の村アプトで焼かれた上質民芸陶器です。
18世紀初頭、セザール・ムーランがアプトに隣接する小さな村カステレで最初の陶器工房を開窯。18世紀代半ば頃には、セザールの息子のうち1人が引き続きカステレで作陶を続け、残り2人はアプトに拠点を移し新たな陶器工房を開窯。それらを基盤に、その後も複数の陶工や経営者により作陶が続けられてきました。
最初期のムーラン家(及びフーク家、アルヌー家)一族、第二世代において代表的なボネ家一族、あるいはクーピニーやセイマール等々。18〜19世紀の期間だけ見ても、窯は村および近郊に30を越えて存在しました。
土地で採掘される顔料オークル(酸化鉄)を用いた黄釉系の陶器を得意とし、またマーブル釉の作りも知られます。陶厚や釉質、焼成感は多種多様ですが、ヴォークリューズの恵まれた土壌を生かしつつも都市型の卓上器としての発展をしたという特異性から、総じて民衆的気配にノーブルな印象が混じり合う魅力をもちます。
稀にアプト窯という呼称を見かけますが、複数の陶工、経営者の窯が別個に存在したことからも、アプト焼(Faïence d’Apt = アプトのファイアンス陶器)と呼ぶのが適切です。
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