年代|16世紀半ば頃
生産|ライン川流域
地域|フレッヒェン/ラーレン
寸法|口径5 高8cm
宗教改革や活版印刷が町をざわめかせた頃。ニシンや胡椒が香り、銅の秤の音が響くアールツェンが描いたような市場の喧噪の片隅で、働く人の喉を潤したのかもしれません。
推定16世紀半ば頃、ライン炻器のちいさな取手付き杯(ベッヒャー)です。
雑味を抑えながら愛らしさを感じる造形に惹かれました。小ぶりで丸胴、短い段付きの高台、シンプルな小環状の把手。恐らくはラーレン(現ベルギー最東部ドイツ語文化圏)、或いはフレッヒェン(現ドイツ、ケルン近郊)で焼かれただろうもので、控えめな光沢と柔らかで仄かにざらついた褐色の肌合いから、鉄分の化粧掛け後に薄い塩釉を施した当時の地域の慣習に即した作りと見てよいように思います。
把手上部、付け根の箇所と底面が発掘後に共直しされていますが、胴部全体や見込みにはヒビや直しは見当らず、美観を保っています。当時のヨーロッパの気配が感じていただける佳品だと思います。
