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中世後期、高品位なワインの嗜み

 

中世後期、1350〜1500年頃のライン炻器より、貴族や聖職者といった当時の上流階級の家庭でワインを嗜むのに用いたとされる、とても珍しい小さな平型の深鉢です。

ドイツ西部、ライン地方窯業の中心地であった街ジークブルクで作られただろうもので、納品地のオランダにて発掘されました。かのピーテル・ブリューゲルが農民たちの傍らに大量に描いたライン炻器群を見ても判るとおり、近代に至るまで、ヨーロッパにおいて民衆用の酒器は大ぶりな作りであることが常でした。まさに彼が題材としたように、日夜踊りながら、呑み愉しんでいたことでしょう(参考 1 2 Click!)。

他方で飲酒することを踏まえるなら、こちらは節度や作法の必要性を感じさせる器形です。高価で、位の高い人々しか用いることをしなかったとされますが、そこにあるのは静けさ、或いは祈りであったかもしれません。

1495〜50年頃、ヤコブ・ヤンスゾーン・ファン・ハールレムなるオランダ人画家の作とされる、聖家族の祝日を主題とした油彩画があります(参考 Click!)。卓上のイエスの前に、似た手の鉢が確認できます。

慣例的には金属製ですが、炻器製の聖餐酒器でしょうか。宗教的な役割を担っていた器かどうかは、研究途上で定かではないようですが、他の同時代の絵画ではあまり見かけないなかで、このような場面で描かれている事実は示唆的です。

楚々とした印象からは一層の滋味が感じられ、そこには当時の作り手の緻密な意識や使い手の品位がいまだ宿っているようにも思えてきます。

目にする機会の比較的多い水差しやジョッキ(クルーク)類と比べても、この種の深鉢は、作られた数が少なく実物に触れる機会があまりありませんが、ほぼ完器で、作りも良質な品。手元に寄せることができたのは幸運でした。

素焼きに塩釉。手捻りによる波脚高台。

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