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Ancient Roman Apoon

 

古代ローマのスプーン。

世界の在り方や見ていた景色がどれほど違っても、生きるために食べるという行為は、今も昔も変わりません。紀元前から用いられ、人の肌に触れ、粘膜にすら届く食卓道具。眺めていると、世界があり、人が生き続けてきたという事実が、静かに身体感覚へ訴えかけてきます。

驚くのは、碗部がすでに私たちの見慣れた輪郭をもち、薄い胎を備えていることです。唇の形や口に入るサイズを合理的に解釈し、ローマ帝国型の都市経済を背景に、職人の分業と量産が洗練されていったことが、スプーン一本からでも見てとれます。

北西ヨーロッパでは、西ローマ崩壊後に生活の物質的な複雑さが一度縮み、スプーンの碗部については、中世末〜近世に至り、食卓の作法や体系や整う過程で、イチジク型や卵型などを経て、ふたたび現代に近い輪郭へと戻ってくることが知られていますが、そうした未来が頭の片隅にあるからこそ、古代ローマの洗練には一層興味深さを感じます。

柄と碗の接合部が「く」の字のように折れているのは、この時代のカトラリーの特徴です。手首を無理に曲げずに碗を口に向けて汁物やソースをこぼしにくくする使い勝手と、力が集中する付け根を補強して折れにくくする強度、鋳造・整形・接合の工程で形を安定させやすい製作上の合理性が重なって、このような設計になったと考えられています。

出土時、柄と碗は分離した状態で発見されており、丁寧に溶接されています。土中での経年変化が部位によって異なることもまた、鑑賞の楽しみの一つです。

材はブロンズ。

 


 

年代|1〜4世紀頃
生産|古代ローマ
地域|ヨーロッパ北西部出土
寸法|15.1cm

 

(ご売約済)

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