
アカデミーフランセーズの会合にしょっちゅう不在(Absence)、つまりいつもアブサン(Absinthe)ぎみだったから、彼の文学的野心は頓挫したのだ。そんなふうに評されたのは、詩人アルフレッド・ド・ミュッセだったか。
南フランスでの仕入れがひと段落して久しぶりに訪れたホテルのサロンで、ベルモットとベネディクティンを基に、アブサンの香りを添えた、オーナーである氏へのオマージュとして作られたというカクテル『L’absence』をお願いし、そんなエピソードをふと思い出す。
突然の訃報が届いたのは昨年夏前のことです。
ほんの少しの会話程度で、親密に関われたわけではないのですが、知的で気高くも、他者への分け隔てはなく慎み深い、あのような人を僕は見たことがありませんでした。
彼自身の謙虚さに比して、彼の知性と美意識によって選ばれただろう調度品、流れる音楽や揃い並ぶ酒々の語りは雄弁で、だからこそ本人に対しては遠目からでも、そんな場を通じて自分なりの学びを勝手に起動させ、想像的に敬慕していたのだろうと思います。この日もそうです。
もっと直接の話をしてみたかったことは勿論で、けれど言葉が少なくとも感じられるように整えられていることが、とても美しい。
代えが効かない人であったことを、一報を伝える新聞記事で彼の同僚も語っていましたが、どうかこの先もずっと心の根が変わらず、この場所が彼として生き続けますように。
《être exceptionnel, qui aimait l’art de vivre à la française (il était d’origine allemande).》
同じく同僚が彼を敬って評した一節からもまた、自分自身は(ごく個人的な)勇気を貰いました。