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16th Century Iron Knife

 

 

イングランドの蒐集家が長く手元に置いていたコレクションの中から選ばせてもらったナイフ。

16世紀頃の北西ヨーロッパ。鍛鉄製。線の細い鉄の道具には、どうしてだか心惹かれてしまいます。

刃から柄までを同じ鉄で一体に作った堅牢な構造は、中世以来の実用品の流れを引き継いでいて、その一方で、柄と端部の造形や彫りの装飾には、近世へと向かう時代の整った意匠感覚が垣間見えます。

資料にみられる類品と対照すると、こうした意匠はとくに1500〜1600年頃にまとまって現れることが分かります。商業の中心が、前時代のブルッヘ(ブリュージュ)からアントウェルペン(アントワープ)へと移りつつあった頃でしょうか。蒐集家の故郷に引きよせて言えば、ウィリアム・シェイクスピアが生きた時代とも重なります。

同時代の別のナイフとしては、柄に木材を用い、真鍮系合金(黄銅)の端部金具に細やかな図像彫刻を施した、より装飾的な作りも知られます。また17世紀以降、交易がいっそう拡大していくと、柄は骨・角・象牙・鼈甲など多様な材で作られることが次第に主流になっていきます。そうした華やかさと比べて、この鉄一体のナイフからこそ感じるのは、中世の残滓です。

丈夫で持ち主を選ばないような作りと、仄かな見せる意識。日々の仕事や暮らしの中で使い込まれた末に今に残っただろう一本から、当時の働く人々の息遣いすら、ふと立ち上がってくるでしょうか。中世から近世へと移り変わる過渡期の気配を掌のうえで伝えてくれる、そんな佳品です。

 


 

年代|16世紀頃
地域|大陸西部
素材|鉄
寸法|17.2cm

販売価格(税別)
¥35,000
Stock:1点

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