Glassware / Item

Early 18th Century “Stem Glass”

 

300年前、バロックの芳香。見惚れる美しさのクリスタル・ステムグラスの紹介です。

推定18世紀前期。それは19世紀以降とは比べるべくもないくらいのごく限られた地域でのみ、ガラス製造が行われていた時代。

繊細優美に宙吹き成形された後に、品良く配された草花のグラヴュールとクラシックなハンドカット。円錐型、かつ縁部分を巻き上げる形状により安定性を確保したコニカル・フォールディッドと呼ばれるフット。熟練した職人の技巧の贅が尽くされています。

パリの馴染みの骨董屋でマダム・マガリから譲ってもらいました。生産国の確証はありませんが、ドイツのザクセンやテューリンゲンの古ガラスによくみられる形状と装飾ですので或いは。ヴェネツィアンガラスの影響がヨーロッパ大陸を北上し、独自の技術発展と洗練化を遂げて生み出された、かつての貴族、有産階級の実用器であると共に、今やアートピースとも呼べる一品。

装飾として絵になりますが、実用もぜひ。ディジェスティフや就寝前のひと時にハーブリキュールなんていかがでしょうか。この手のステムグラスとしては比較的容量も注げ、カップ8分目で約45ml程。シャリー酒やマディラワインにもぴったりだと思います。

人を招くシーンにももちろんですが、個人的には静かな一人時間を過ごしたいシーンにこそ出番の多い小さなグラス。ガラス胎の表情と注ぐ飲み物の色彩が織りなし魅せる美しさを、注げる量が少ないからこそ、味覚と共にゆっくりと味わっていただけたら。

ささやかで特別な時間を日常に添えて。

 

 

手吹きガラス

19世紀末までフランス各地の村の大・小さまざまな工房で吹きガラスが作られていました。

ガラスの製法には様々ありますが、この時代の民衆の器としての吹きガラスには、もっとも古いガラス製法である宙吹きという手法が主に用いられています。吹き竿の先に溶けたガラスをつけ、息を吹きこみ、空中で風船のようにガラスをふくらませて形作りを行う製法です。

あるいは金型を用いてカタチを整える場合には型吹きという製法が用いられることもあります。この技法は19世紀半ば以降に発展し徐々に機械による型吹きがメインとなっていきますが、古い作りで見られる手作業(マウスブロー)による型吹きガラスには、機械を用いた成型とは異なり気泡や揺らぎといった個体差があります。

仕上がりの雰囲気ははそれぞれですが、職人の気配が感じられる吹きガラスならではの表情はとても魅力的です。20世紀以降、ガラスの製造は「手工業」から「機械工業」へ移行していき、小さなガラス工房はやがて姿を消してしまいました。アンティークの吹きガラスには、今は失われてしまった手工業文化の一端を垣間見ることができます。

 

 

(ご売約済)

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