Glassware / Item

Baccarat XIXème “Verre à Absinthe”

 

南フランスの骨董屋で見つけた美しく希少で、そしてマニアックなアンティークバカラ。

19世紀にパリを中心に大流行した薬草酒アブサン用のステムグラスです。
成形は推定19世紀末期頃、ごく古手のユニークピース。

カップにはフラットカット、ステムには当代バカラの象徴的なデザインの1つでもある支柱装飾ステム (jambe Balustre) を採用。

優美でいてクラシカルな印象。使用用途が限定されていることが、選びとることの困難さや躊躇に繋がることは重々理解していますが、器の所有欲を起点にセラーに並べる酒を選びたいとさえ思わせてくれそうな、固有の美しい佇まいを纏っています。

カップ下部のくびれが特徴的ですね。これはアブサンを注ぐ分量の目安とするため。水を加えることで非水溶成分が析出して白濁するアブサンの特質を楽しむ、所謂「水割り用」グラスです。

ステムデザインからバカラによる成形品ということが判断できますが、初見のカタチでした。

1917年発行、バカラのプロダクト群を一覧で確認することができる最も古いカタログに、アブサングラスから派生したと思われる似たカタチのスパークリングワイン用グラスの記載がありますが、アブサングラスについては項目すらありません。理由は明快ですね。現在ではその毒性が否定されていますが、20世紀初頭のフランスでは、アブサンが、幻覚作用を及ぼす悪魔の酒として禁酒扱いとなっていたためです。

歴史背景はが19世紀末ごろの成形品であることを教えてくれます。当時のアブサングラスと言えば、宙吹き成形、ソーダガラスの個体は珍しくありません。他方で貴族・ブルジョワ向けの上質なクリスタルガラスの個体は、ほとんど存在しません。

アブサンが主に安酒として当時流行したからこそ、市井の工房で吹き上げられた民芸的グラスの個体が同様に多いのだと想像しますが、バカラにも作りがあったのですね。

希少な一品だと思います。眺め嗜むとくべつな酒器。目を留めてくださる方、いらっしゃいましたら。

 

Baccarat (バカラ)

世界で最も名高いクリスタルガラスのラグジュアリーブランドとして知られるバカラ。

その歴史の始まりは、1764年、フランス王ルイ15世に認可され、ロレーヌ地方のバカラ村に設立されたガラス工房です。1816年、現在でもバカラと並んで称されるクリスタルガラスのブランド、サンルイとの一時的な合併時に技法を学び、最初のクリスタルガラスを工房にて製造。その後、1800年代半ばまでは合併、或いは流通提携を続けますが、1860年「バカラ」として正式に商標登録。現在までその歴史が続いていくこととなります。

デザイン、モデリング、ホットワーク(ガラスの吹き上げ作業)、コールドワーク(カッティング、装飾作業)。あらゆる工程に、超一級の職人の仕事が介在した惚れ惚れする程に素晴らしい作りの工芸品。

クープランでは、そんなアンティークバカラの中から、美しくも現代的な風通しの良さが感じられる、上品な絢爛さを纏った品を厳選、紹介しています。

 

Crystal Glass (クリスタルガラス)

清らかな透明感、美しい輝き、高音の澄んだ音色。まるで天然の水晶のようなであることから、その呼び名で呼ばれるクリスタルガラスは、特に西洋では、装飾芸術としてガラスの価値を高めた存在です。

通常のソーダガラスより硬質で、溶解温度も低く抑えられるという特徴から、繊細なカットやグラヴィールをすることができますが、その成形には高度な知識や技術が必要です。

例えば歴史ある工房では、火を用いてクリスタルを吹く作業「ホットワーク」と、製品を研磨しカットや装飾を施す「コールドワーク」の、それぞれの工程に専門の職人がおり、フランスが世界に誇る著名なクリスタル工房バカラやサンルイは、同国の最優秀職人 M.O.F. (MEILLEUR OUVRIER DE FRANCE ) を多数輩出しています。

高品質なクリスタルガラス成型は、まさに伝統と技術の結晶です。

(ご売約済)

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