Glassware / Item

Verre pour Liqueur à fond Trompe l’œil

 

19世紀後期〜20世紀初頭フランス。少ない量を注いでも美しく映えるように上げ底仕様となっていることから、トロンプ・ルイユ(Trompe-l’œil = 騙し絵)の呼び名でも知られる、吹きガラスのアペリティフグラスです。

この種のグラスは、カッティングが施されていることが多く、無加飾のものは意外とありそうでありません。厚底に、マウスブロー成形の揺らぎ、躯体の歪み。和洋感じさせない、アノニマスな佇まい。何てことないのですが、古ガラスの表情を存分に愉しめる素晴らしい造りだと思います。

 

手吹きガラス

19世紀末までフランス各地の村の大・小さまざまな工房で吹きガラスが作られていました。

ガラスの製法には様々ありますが、この時代の民衆の器としての吹きガラスには、もっとも古いガラス製法である宙吹きという手法が主に用いられています。吹き竿の先に溶けたガラスをつけ、息を吹きこみ、空中で風船のようにガラスをふくらませて形作りを行う製法です。

あるいは金型を用いてカタチを整える場合には型吹きという製法が用いられることもあります。この技法は19世紀半ば以降に発展し徐々に機械による型吹きがメインとなっていきますが、古い作りで見られる手作業(マウスブロー)による型吹きガラスには、機械を用いた成型とは異なり気泡や揺らぎといった個体差があります。

仕上がりの雰囲気ははそれぞれですが、職人の気配が感じられる吹きガラスならではの表情はとても魅力的です。20世紀以降、ガラスの製造は「手工業」から「機械工業」へ移行していき、小さなガラス工房はやがて姿を消してしまいました。アンティークの吹きガラスには、今は失われてしまった手工業文化の一端を垣間見ることができます。

(ご売約済)

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