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Items / Pottery

Creil et Montereau “Tasse et sous tasse”

 

19世紀中期、クレイユエモントローのカップ&ソーサーです。

手彩小花柄のごく上品で柔らかな牧歌。淀みなく流れるように描かれた細やかな図柄に、デコレーターが培ってきた職人仕事の美しさを視ます。他方で作陶技法を模索していたであろう最初期のテールドフェール(半陶半磁器)だからか、クレイユエモントローとしては珍しく仕上げは甘手。ですが経年による優しい古色が、可愛らしさに小慣れた大人な印象を加えて、寧ろ全体の雰囲気を佳き塩梅に演出していると感じます。

意匠性に加えて、指馴染みという機能性まで計算されたハンドル。カップのカタチはクレイユエモントローを象徴するモデリングです。デコレーションは非常に希少で、個人的には初見。個体数はかなり少ないであろうと思います。

甘手故に多少の吸水性の高さはありますが、寸法も程よく、実用性も備えた素敵な一品だと思います。

 

Porcelaine de St Cricq Casaux & Cie
à Creil Medaiile d’Or 1834

背面にはサン・クリーク・カゾー経営時代の作陶品であることを示す刻印。

因みに余談ですが、カゾーは、当時のクレイユ市長でもありました。
当時の窯業が、街の一大事業であったことが窺い知れますね。

 

Creil et Montereau (クレイユ エ モントロー)

1796年に開窯したクレイユと、1700年代前半から製陶を続けていたモントローが、1840年に合併してできたのが陶器会社クレイユエモントロー。1920年にはショワジールロワと合併し、社名をHBCM (Hyppolyte-Boulanger Creil Montereau) と変更し、1955年まで作陶が続けられました。

主なマテリアルは当時の主流であったテールドフェール(半陶半磁器)。
パリのブルジョワジーを顧客に、当時のフランス製陶文化を牽引しました。

地図(Click!

 

Terre de fer (テールドフェール)

技術的・技法的というよりは、商用的な言葉としての側面のほうが強いため語義は多岐にわたり、厳密な定義付けをすることは難しいですが、1800年代初期までの繊細なファイアンスフィーヌ陶器の少量生産を経て、1800年代半ば以降に台頭する市民社会に向けて量産されるようになった、より実用的で磁器質の強い陶器(半陶半磁器)のことを指してフランス語では「テールドフェール」と呼びます。

それ以前の陶器に比べると、主原料である粘土に磁器生産に使われるカオリンや長石がより多く加えられ、釉薬はホウ砂が主原料となっています。

生産者の匂いが感じられる不均一な施釉や経年による貫入といった古い陶器ならではの不安定さと、ある程度量産化が整備された時代の陶器ならではの実直な佇まい。双方が同居した過渡期的バランス感覚は、今の暮らしに溶け込んだときに、無理のない心地よさを生んでくれるなと感じています。

クープランの定番品です。

クレイユエモントロー、ショワジールロワ、ジアン、サルグミンヌ等々。当時のフランスにおける陶器製造の中心にいた様々な陶磁器窯で、多様なテールドフェールの器が作られました。

 


 

Size: Cup W8.4 × D6.2 × H6.1cm / Saucer φ12.5cm

(ご売約済)

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