menu

Items / Pottery

Petite Bouteille de La Borne

 

19世紀後期頃、ラ・ボルヌの陶磁器より、洗礼や聖餐式といった聖礼典において葡萄酒、或いは葡萄ジュースを注ぐ際に用いられることもあったと伝え聴いている小瓶です。

17世紀、ロワール地方ブールジュ近郊に、かのアンリ4世治世期の大臣シュリ公が、陶芸振興のため周辺地域に点在していた陶工を呼び寄せて作った村、ラ・ボルヌ。

地図(Click!

古窯ヌヴェールから北西70キロ程に位置する小さな集落は、開村以来、窯業と共に歴史を歩んできました。

周辺で採掘される砂岩を含有した粘土を用いた素焼素地に、釉薬を施し仕上げた特徴的な製法はフランスでは「グレ = Grès」と呼ばれます。砂岩製の陶磁器、あるいは炻器の一分類とも捉えられると思います。

主たる作陶は素地の吸水性の低さを生かした瓶、水差しといった液体容器です。殆どが無文。黒、灰、茶、赤みかかった黄といった落ち着いた彩度の施釉に、気泡やムラといった化粧景色の自由さも相まり、佇まいには日本の民陶にも通じる印象を受けます。

19世紀末頃には陶工が80人(住民約700人)を越えて、作陶最盛期を迎えます。ごく小規模な生産体制(恐らくは家内制手工業〜問屋制家内工業の域)を村単位で維持しながら、市井の人々のための生活道具を作り続けたことは、特に工芸の機械工業化が進んでいた近代フランスにおいては特筆すべきことでしょう。

ロワール川近郊から、フランス南西部に至る縦のラインの各所で似た手の水差しの存在を確認していますが、そのなかでもラ・ボルヌは、現存個体数から想定される作陶の継続性を鑑みても、個別で言及すべき存在だろうと思います。

土地の気候風土のなかで生まれ、周辺地域の暮らしに根ざし活用された古民藝品とも呼べるでしょう。

 


 

約 φ9 × H17.5cm

(ご売約済)

Related posts

テキストのコピーはできません。