Item / Pottery

Lèchefrite en terre cuite

 

葡萄の若枝が勢いよく炎を上げているにもかかわらず、小さな凍えるような息吹が過った。
そして二人の老女は押し黙った。焼いている肉から脂受けに落ちる肉汁の音が聞こえるだけだった。

エミール・ゾラ 小田光雄訳『パスカル博士』論創社出版 P359

 


 

レシュフリット(小田訳では脂受け)の名で知られる調理用の耐熱皿。
18世紀頃、フランス南部。鉄製、真鍮製も多いですが、一層田舎の生活を想像させる粗野で大らかな陶製です。

素朴で雰囲気ある茶釉の表情に、ぐっとこちらを惹きつける存在感は王道然としています。

因みにレシュフリットは、中世から存在する言葉。古くは舐めまわすことを意味していた「Lèche」と揚げ焼くことを意味する「Frite」を組み合わせできた造語なようです。語源が示すように、窯・暖炉でを使って調理した肉や野菜は、銘々の皿に盛り付けられた後、旨味が混ざり合った汁を両の口から注ぎかけられ(ハンドルはその役割を満たすために取り付けられたもの)、舐めまわすくらいに最後まで美味しく食されたのでしょう。或いは、田舎では取り分けることをせず、テーブルに置かれたレシュフリットから直接食すことも多かったように思います。

お腹がぐぅと鳴りそうです。

当時の庶民の暮らしぶりを想像したくなる、西洋ならではの古陶器。

 


 

W45.5 × D22 × H5 /ハンドル含 D28 × H10cm

(ご売約済)

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