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Creil Petite Assiette Octogonale

 

1810〜30年頃、合併前のクレイユ窯より。
ファイアンスフィーヌ、ちいさめのオクトゴナル皿です。

涼しげなノーブルを纏った佇まいは、細やかに作り込まれた石膏型に、薄い透明釉を施し低音焼成したファイアンスフィーヌ固有の美質。この時代のテールドピップらしいゆららかな表情の白色には、実直な清廉さを感じます。経年による古色も塩梅よく、雰囲気あるものです。

この時代のオクトゴナル皿自体は長く扱い続けていますが、元より個体数が少ない小さめの設計でクレイユ窯、加えて初期のひし形エンボス、というふうに範囲を絞っていくと実際には数えるほどしか手に取れたことはありません。

変わらずやはり良い皿です。

 

Creil (クレイユ)

1797年、パリの北に位置する郊外の街クレイユに、アイルランド出身のパリの実業家ロバート・ブライ・オライリー (Robert Bray O’Reilly) なる人物が、クリスタルのガラス製造から事業の変更をするかたちで開いた陶器窯。1802年、隣町シャンティーの窯のディレクターであった英国人ジャック・バグナル(バニャル)が、能力の高い労働者や職人を引き連れて転籍。窯経営に参画し、英国風の上質陶器製陶を開始したことで、クレイユは急速に発展していきました。

18世紀末から19世紀初期にかけて、フランスで独自発展した英国風上質陶器は「ファイアンスフィーヌ」と後世に呼ばれることになりますが、当時のファイアンスフィーヌ製陶文化においてクレイユ窯は中核を為しました。

単独のクレイユとしての作陶品は1800年代半ば頃まで存在。1819年にクレイユの所有者、サン・クリーク・カゾーがモントロー窯を買収、やがて2つは完全に合併をし、クレイユエモントロー社となります。クレイユエモントローは、ファイアンスフィーヌから、より量産可能なテールドフェール製陶へとシフトし、引き続き19世紀末まで、フランスの陶磁器生産を牽引していきます。

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Faience Fine (ファイアンス フィーヌ)

ファイアンスとは淡黄色の土の上に白い不透明な錫釉をかけ完成させる焼き物のことです。1700年代のフランスで中上流階級の人々が用いた食器には主として「ファイアンス製陶器」と、限られた貴族のみが所有することができた高級な「磁器」「純銀器」がありました。

そんなフランスに、1700年代半ば、当時ウェッジウッドを筆頭に陶器製造の最先端国だった英国の「クリームウェア製陶器(クイーンズウェア)」が流入し、貴族、そして当時台頭してきていた市民階級(ブルジョワジー)たちの羨望の的となりました。

ですが王室によりその製造技法は特定の窯のみの特権とされ、また国内で採取できる陶土の違いもあり、英国式陶器をフランス各地で作陶することは困難でした。経営者や陶工たちはそうした環境化、1789年以降のフランス革命という激動をも乗り越え、伝統的なファイアンスと英国クリームウェアの狭間での技術開発を続け、人々の心を満たす、フランスならではの美しい陶器を作り出しました。

きめ細やかで品のある陶肌と、指で弾いた時の耳心地良い響き。
白、あるいは象牙色を素地にして、ごく薄い透明な錫鉛釉を施し低温焼成した繊細で軽やかな上質陶器。

それがフランスの「ファイアンスフィーヌ」です。

1700年代半ばに隆盛を極めた、貴族向けの英国式陶器が、今では初期のファイアンスフィーヌと呼ばれます。パリのポントシューやロレーヌ地方のリュヴィル(当時はロレーヌ公国領)といった王侯貴族の保護下で発展した名窯があります。

1800年代前後頃、市民社会到来以後は、王侯貴族の保護下にあった窯は廃れました。入れ違いで独自の進化・発展を遂げたのが、フランス式のファイアンスフィーヌです。ナポレオンの大陸封鎖による英国製陶器の輸入制限という外的な後押しも受け、ブルジョワ的な価格や意匠性での顧客アプローチに成功した、新興の窯々が存在感を示します。クレイユやモントロー、ショワジールロワといったパリ近郊の窯を軸に、フランス各地で、ファイアンスフィーヌが作陶されました。

とは言え時流の変化は世の常。1830年代以降、止まることのない近代化の波のなか、さらなる量産に向いた半陶半磁器(≒テールドフェール)の台頭があり、その作陶は急速に衰退することとなりました。

革命前と後で時代を区切るなら、それぞれが数十年という僅かな期間の作陶でした。

ファイアンスフィーヌ、それは当時のフランス人が苦心の末に生み出した、儚さと当代固有のブルジョワ的穏当な実直さを纏った古陶器です。

 


 

約 直径21.5 / 20.5 / 高2 センチ

(ご売約済)

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