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ブルジョワ的ノーブル、初期パリ窯メゾン・ロクレ

 

フランス革命期。18世紀末、パリの磁器(=通称パリ窯)、メゾン・ロクレ。

パリ生まれのジャン=バティスト・ロクレ(1726-1810)が、当時のヨーロッパで磁器製造の最先端だったドイツまで赴き知見を広げ、帰巴後にフォンテーヌ・オ・ロワ通りに開いた磁器工房です。

所謂「パリ窯」には18世紀末と19世紀以後の大きく分けて2つの時代区分が存在しますが、メゾン・ロクレは、1770年代初頭に、王立窯セーヴルの持っていた磁器製造の特権が緩和されたことで生まれた最初期のパリ窯で、王族の保護下になかった当時としては唯一のパリの私営磁器窯です。セーヴルの影響を受けながらも、18世紀以前ならではの独特な揺らぎある硬質磁器を、より実直に軽やかにメゾン・ロクレは作り上げました。

ですが特権緩和されながらも依然存在した開窯当初の磁器の製造制限、あるいは1789年を契機に始まる市民革命の影響による貴族的趣味の衰退といった時代の潮流もあったのだと思います。財政難という問題が常に付き纏っていたようで、1787年には、ロクレの右腕だったドイツ人造形師ローラン・ルシンガーに経営権を譲渡するといった対策も講じられますが、状況の好転が長く続くことはなく、1800年代初期、約40年という短さで、その歴史には一旦の区切りがつけられています。

 

セーブルのような王室御用達の豪華絢爛な芸術工芸品でもなければ、1800年代以降の量産工業品でもない。

見方によっては中途半端とも捉えられそうな立ち位置に結果として存在するため、現地フランスの骨董世界でも語られることが多くはない磁器窯。況や日本でをや。けれどもこの窯の器には、歴史を俯瞰したときに過去未来系的に感じることができる、18世紀末フランスという時代の過渡期性が垣間見え、その不安定さ含めて、個人的にはとても興味をそそられます。

 

骨董品としての重さと風通しの良さの調和。

クープランのフィルターを通してこそ紹介できる骨董品はどんなものだろう。アカデミズムとコマーシャリズムの狭間の浮遊感。現代とも共鳴する心地よいパリの古手磁器を、暮らしの片隅にいかがでしょうか。

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