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19世紀、南フランスの黄釉雑器

 

北方のカンタルやサヴォワ地方にも似た手の造りが見られますが、絵付けの筆触と彩度や背面の処理から、南フランス、ガール県近郊、恐らくはサン=カンタン=ラ=ポトリ及び周辺で作陶されたものと推察します。

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何れも19世紀末頃の作陶品です。

壺、水差しといった道具類ではなく、調理食事のための鍋や皿類を主とした作っていたことで知られる当地ですが、日常で用いられて多くが散逸してしまったのでしょう。殊に実用的な器類については現地でもあまり見かけることがありません。

同様の傾向自体は、陶磁器の伝世において並べて言えることですが、例えば同じ南フランスのムスティエやアプトの器と比べても、時代は下るのに現存個体数はより少なく、市井の人々が地産地消した雑器であったことは、一層つよく感じるところです。

他のラングドック、プロヴァンスの黄釉陶器に比して控えめな彩度と、掌に収まる小さな寸法。釉調や絵付けの大らかさは、甘やかとも捉えられますが、そこは寧ろ愛らしく、親しみすら覚えます。中央集権により産業化が進展し、量産の半陶半磁器や硬質磁器が席巻していた当時のフランスの市場を鑑みても、なんてことはなくとも地域の生活と気配が感じられた長閑でやさしい皿々でした。

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