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18世紀英国、ジャックフィールド陶器

 

初期の近代英国陶器における亜種。

ジャックフィールド様式による黒釉陶器は、1710年代にアイアンブリッジ峡谷近郊のちいさな村、ジャックフィールドで、父リチャード、息子モーリス・サースフィールドの親子により生み出されました。

程なく英国工芸の最先端スタッフォードシャー州(ウェッジウッドの創業地)の窯々でも同技法が活用されることとなりますが、1770年代頃を境にして、その後は衰退の一途を辿ります。

作陶最盛は1760〜70年代頃というわずかな期間。

推測ではありますが、近代工芸の発展初期は評価された新鮮な技法が、クリームウェアやホワイトウェアの研究・開発、及び量産化の整備に重きを置く発展過渡期に、その嗜好性ゆえ淘汰されてしまった、というような経緯なのだろうと思います。

 

 

黒釉の器として、フランスのキュノワールとは異なる、ジェントルな儚さとでも言いたくなるような、固有の魅力があります。かのベルギーのナミュール焼きの黒釉器は、このジャックフィールド様式の模倣から始まっています。

日本の漆器にも例えられるという、深々と鮮やかな施釉。意匠華美な造りも散見されますが、殊に装飾性を抑えた作品は、全体を統御する普遍性が現代との接点となりながら、古き英国の上品でかぐわしい香りが感じられます。

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